絵筆が生む地域とのつながり。豊川市でデジタルアートも学べる教室をオープン
画家、絵画教室運営 中川 一也さん
- 移住エリア
- 愛知県内→愛知県豊川市
- 移住年
- 2016年
商売繁盛のご利益があると知られる豊川稲荷から車で10分ほど。静かな住宅街に中川一也さんの絵画教室があります。ゾウを描いたカラフルな看板が目を引く教室には、オープンから半年で50人を超える生徒が集まり、子どもたちがアートに触れられる貴重な場となっています。
10年前、当初は利便性から選んだ豊川市への移住でしたが、「予想以上に子育ての環境が整っていて、本当に良かった。人も程よい距離感であたたかく、第2の故郷です」と言い切るほど、馴染んでいます。
目次
場所から決めた移住先
名古屋市出身で、地元の美術大学で日本画を学んだ後は西尾市などで会社員として働いていた中川さん。当時の職場の岡崎市と、妻の実家がある豊橋市の中間地として豊川市をマイホーム建築の場所に選びました。市内で土地を探す中でハウスメーカーに紹介された場所の一つが、現在住んでいる場所でした。目の前にあったのが大きな公園。立派なクスノキの木が生え、広いグラウンドではボール遊びができ、小さな子から大きな子まで思いっきり遊べます。のびのびと子育てできる環境に惹かれて、移住を決めました。

大きなクスノキがある公園。この他にも子どもたちがのびのびと遊べる大きな公園が豊川市内にはたくさんある
移住時、長男は6カ月。2年後には長女も生まれました。子育てしていく中で気付いたのは、思った以上に豊川市が幼い子どもを育てるのに恵まれた環境だったということです。
「大きな公園が市内にたくさんあり、車さえあればどこにでも行けて、渋滞もない。住み始めてから子育てには最高の環境だと分かりました」
保育園に入園する時もスムーズで、待機児童の問題もなかったそうです。
幼かった子どもたちも、現在は小学4年生と2年生。小学校までは徒歩30分かかり、予想以上に遠かったのは想定外でしたが、「それと引き換えても、自然豊かな大きい公園が身近にある環境で子どもたちを育てられることは幸せですね」と話します。
都市部ではなく、豊川市だからこそできる挑戦
子育てを通じ、教える楽しさを感じた中川さん。自分が得意な絵を活かし、絵画教室を開きたいと思うようになります。会社員として引き続き働きながら、地域のワークショップなどで教えて経験を積みます。商工会議所の創業塾にも入り、飲食店やネイルサロンなど市内で新たな事業を立ち上げようと頑張っている仲間とも出会うことができました。その時のつながりは今も大きな力になっています。
思い立ってから5年。正社員を辞めて教室のオープンに向け本格的に動き出します。市内どこからでも通いやすいことを条件にやっと見つけたのが、元居酒屋さんだった物件でした。費用を抑えるため、内部は3カ月かけて一人でセルフリノベーションし、その様子もInstagramで発信していきました。
2025年7月、「豊川初のアナログアートとデジタルアート両方学べる絵画教室」をスタートします。従来の絵の具や紙粘土を使った「アナログ」アートから、iPadと3Dプリンターを使った最先端の「デジタル」アートも学べるのが特徴です。

住宅街の中にある中川さんの絵画教室。目の前には木陰が涼し気な神社がある
「東京や名古屋など都市部だったら他にもデジタルアートの教室はありますが、豊川ではまだ誰もやっていなかった。新しい挑戦を受け入れてもらえたと思います」
と話します。
さらに豊川市では小学校の部活がなくなり、習い事を探す保護者が多かったことも追い風になりました。「最初の1年は生徒数がゼロでも仕方ない」と覚悟していましたが、Instagramでの発信を通じ、オープンと同時に25人が集まりました。その後も生徒数は増え、子どもから大人まで現在は50人を超えます。年末には作品展も開くことができました。
自由に表現することを学べる貴重な場所。アートに触れられる場
順風満帆な教室運営ですが、中川さんにとって本当に嬉しいのは生徒さんたちからの言葉。「休みたくない。毎日、教室に来たい」と言ってくれる子がいたり、「仕事で嫌なことあったけれど、今日はこの教室に来られると思って頑張れた」と話す会社帰りの人がいたり。そんな言葉が、中川さんにとっての宝物です。
アートに正解はありません。様々な画材に触れて感性を磨き、好きなことを自由に表現する楽しさが、時に生活を豊かにし、心を癒します。美術館や学校ではなく、生活に身近な場所でアートに触れる場所を提供できていることに、やりがいを感じています。
教室名はゾウの鳴き声、「PAON(ぱおん)」。名前の由来を聞くと、「可愛い響きで子どもたちも言いやすい。何より、ゾウが嫌いな子どもっていないでしょう」とにっこり。「ここでは肩の力を抜いてアートを楽しんでほしいですね」と教えてくれました。

絵画教室で子どもたちが作った作品。絵の具や紙粘土を使った作品以外にもタブレットを使ってデジタルアートも学べる
移住して感じたデメリットはほぼゼロ!豊川が第2の故郷に
地縁もない場所でも移住後、のびのびと子育てをし、事業を軌道に乗せることができた中川さん。「移住して感じたデメリットというと…思い当たらないですね。あえて言うなら、画材を買う場所が近くにないくらいでしょうか。本当に満足しています」と笑顔を見せます。移住した10年前と比べ、市内には大型のショッピングモールや近隣市にはアウトレットモールもでき、より住みやすくなりました。周りに若い世帯も増え、これから発展していく勢いを感じるそうです。
「公園で子どもたちがのびのびと遊んでいる様子を見ると、この子たちの子どもたちも、ここで同じように育ってこんな景色がずっと続けばいいな、と思うんです。豊川に移住して未来が想像しやすくなりました。ここは僕にとって、第2の故郷です」
地に足を付け、地域とつながり、将来を見据える姿が印象的でした。

絵画教室で子どもに教える中川さん

画家、絵画教室運営 中川 一也さん / なかがわ かずや
1987年、名古屋市中川区生まれ。名古屋造形大学を卒業後、西尾市の企業などで商品開発に携わる。2015年に岡崎市の会社に転職、2016年から豊川市在住。2025年から同市内で絵画教室を開く。画家としても個展を開催し、活動を続けている。