栃木県さくら市へ移住!「私が私を好きになれたまち」
さくら市地域おこし協力隊 甘糟 里奈さん
- 移住エリア
- 埼玉県川口市→栃木県さくら市
- 移住年
- 2025年
写真は、春は桜の名所として知られるお丸山公園(大蔵ヶ崎城址)の橋の上で。公園には城を守るための深い堀などが残る
栃木県さくら市。県庁所在地の宇都宮市から電車で約15分というアクセスの良さを持ちながら、日本三大美肌の湯に数えられる「喜連川(きつれがわ)温泉」や、豊かな緑に囲まれたのどかな田園風景が広がるまちです。
このまちで今、抜群の行動力で周りを巻き込み、みずみずしい感性で地域の魅力を発信しているのが、地域おこし協力隊として「観光PRインフルエンサー」を担う甘糟 里奈さんです。
SNSでの発信にとどまらず、地域のイベント司会、親子向けのワークショップ開催、さらには中学校での講演までマルチに活動する彼女ですが、移住前は「自分の居場所が見つからず、自信を失っていた」と言います。
さくら市での暮らしは、甘糟さんの人生をどのように変えたのでしょうか。
目次
コロナ禍で知った「自分のやりたいことで生きる」という選択肢
埼玉県川口市で生まれ育った甘糟さん。移住前は、海外出身の講師が多数在籍する英語塾で事務職として働いていました。
「職場では海外から来た方々と接する機会がたくさんありました。彼らは『お金のため』ではなく、『自分が本当にやりたいことがあるから日本に来た』と、熱い想いを生き生きと語ってくれました。その姿が本当にまぶしくて。自分の人生を振り返ったとき、『日本の良さを世界に広める』という、中学生のころの夢を思い出しました」
もともと絵を描いたり、何かを創作したり、その発信に憧れを抱いていた甘糟さん。しかし、当時の自分には想いを形にする機会も自信もありませんでした。「周りから『何か違う』と言われることがよくあり、人と違うのかと自己否定ばかり。自分のことがあまり好きになれなかった」と振り返ります。
そんな中、訪れたコロナ禍。誰もが立ち止まり、人生を見つめ直したあの時期に、甘糟さんも「新しい場所で、自分の力で挑戦してみたい」と決意します。
公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構が主催・共催する大規模フェア「ふるさと回帰フェア(※)」や「オールとちぎ移住&しごとフェア(※※)」に足を運んだ甘糟さんは、そこで初めて「地域おこし協力隊」という制度に出会いました。複数の自治体を比較検討する中で巡り会ったのが、栃木県さくら市の「観光×インフルエンサー」というミッションでした。
「農業の募集が多い中、発信をミッションにするこの仕事に『これだ!』と直感しました。何より、さくら市役所の方々がものすごく熱心に、かつ謙虚に対応してくださったことが自分の気持ちの後押しになりました。後日、ツアーでまちを案内していただいたのですが、環境もすごく素敵で。まちと人の温かさに触れて、ここなら頑張れるかもしれない、と移住を決めました」
甘糟さんは2025年5月に地域おこし協力隊に着任。それを機に、埼玉県からさくら市へ移住し、新たな場所での新生活がスタートしました。

活動拠点の一つとなっている「お丸山ホテル」のロビーにて
「人がものすごく良い」――さくら市が教えてくれた、人付き合いの楽しさ
縁あって家が見つかったのは、山や田園風景、歴史的な町並みのある地区でした。朝は鳥の鳴き声で目覚めるような豊かな自然。さくら市での暮らしの中で、彼女を何よりも魅了したのは『人』でした。
「私はさくら市の最大の魅力は、人がものすごく良いことだと思っています。挨拶をして『移住してきました』と言うと、皆さん『来てくれてありがとう』って歓迎してくださるんです。近所の方が『いってらっしゃい』って笑顔で声をかけてくださったり、採れたての野菜を差し入れてくれたり。毎日が人間味のある温かいやりとりであふれています。移住フェアで出会い、移住のきっかけをつくってくれたのが、さくら市 移住定住推進係の越智さん、岩崎さんです。今も市庁舎でお会いすると『困っていることはないですか?』と声をかけてくださり、とても心強く感じています」

お丸山公園(大蔵ヶ崎城址)からの眺め。喜連川地区の豊かな田園風景が広がる
甘糟さんの主なミッションは、さくら市全体の観光やまちの魅力をPRすること。
同時期に地域おこし協力隊に着任した仲間と、観光×インフルエンサー「さくらtwins」としてInstagramでさくら市の魅力やイベント情報を発信していましたが、移住し1年が過ぎた頃、甘糟さんの中で気持ちに変化が生まれました。観光資源や地域の方々と関わるうちに、自分ひとりが「素晴らしい」と一方的に伝えるのではなく、地域の方々と「一緒にまちを盛り上げる」ことが大切なのではないかと思うようになったそう。
現在はお丸山ホテルを拠点に、喜連川温泉(市営もとゆ温泉、市営露天風呂、道の駅きつれがわ温泉、亀の井ホテル喜連川、喜連川早乙女温泉、お丸山ホテル)の魅力を移住者目線で発信する取り組みを始めています。
「まだ手探りの部分も多いですが、今後は市内の他の温泉施設にも足を運び、施設ごとの魅力をリサーチしながら移住者目線で深掘りしていきたいと考えています。」
当初はSNSの専門的なスキルがあったわけではありません。しかし、動画の冒頭3秒で引きつける工夫を凝らしたり、県外のSNS講座にも積極的に参加するなど試行錯誤や勉強を重ねました。何より大切にしたのは、自分で見聞きし、体験した楽しさや感情を、そのまま発信することでした。
「温泉のPR大使の方々もいらっしゃいますが、自分の今の立場だからこそできることがあるのではと思うようになりました。市の皆さんには、『とにかく楽しんで』と背中を押してもらいながら、現在はお丸山ホテルの公式SNSアカウントの運用もさせていただきつつ、より強い発信をしています。喜連川温泉は『温泉総選挙2025』の美肌部門で関東第3位を受賞しており、その名の通りお肌がツルツルになります。今年の選挙に向け、地域の方々と一緒にまちを盛り上げるべく、精力的に活動していきたいです」

「さくら市市制20周年記念 きつれ川花火大会2025」にて。仕事としての情報発信は未経験からのスタート。動画の撮影・編集にも工夫を重ねる
まちに飛び込み、自ら電話やメールで地域団体にアプローチを続ける中で、横のつながりは一気に広がっていきました。地元の音楽祭「さくらジャンゴ・ラインハルト・フェスティバル」のMCを務めたことをきっかけに、イベント司会やテレビ出演の依頼が舞い込むようになります。

人前で話すことにも楽しさを覚えるように

地元テレビ局の番組に出演。地域おこし協力隊として、さくら市内にある今宮神社境内の「紫陽花手水舎」をレポート
地元の子どもたちとの交流、そして創作の道へ。広がっていくこれからの夢
移住して約1年半。かつて「自信がない」とうつむいていた甘糟さんは、今や栃木県のとちぎ地域おこし協力隊ネットワーク「観光・情報発信グループ」のリーダーを務めるほど、頼もしい存在へと成長しました。また、さくら市内の中学校での職業人講話に登壇し、その活躍を広げています。
「1年前の自分から見たら、今の私はまるで別人みたいです。家族にも『変わったね』と言われます。ちゃんと見られなきゃ、と肩肘を張っていたのをやめて、力を抜いて『自分のままでいいんだ』と自分を認められるようになりました。私の経験を伝えることで、いつかさくら市の子どもたちが大人になったときに故郷に帰って仕事をしたいと思ってくれたり、移住を迷っている人、行き詰っている人たちの背中を少しでも押せたらいいなと思っています」
甘糟さんの視線は、さらに未来の地域づくりへと向いています。
近所の方から情報をもらい、子どもたちの居場所づくりや不登校の親子の支援に取り組む「NPO法人子育て支援塾」の活動に参加する機会にも恵まれました。「夢が見つからない子や、生きづらさを感じている子どもたちの力を引き出すような伴走支援をしたい。学生と一緒にSNS発信をすることができたら、もっと発信の幅が広がるのではないか」と語ります。
「将来的には、動画クリエイターとしてのスキルを極めつつ、さくら市の日常や民話を織り交ぜた小説を書きたいという夢もあります。それがいつか、このまちの新しい観光(聖地巡礼)につながったら素敵ですよね」

県主催の研修会に参加。興味のある事柄についてのインプットを欠かさない
移住を検討している皆さんへ
自分らしさを見失いそうになっていた場所から、自分らしさを開花させられる場所へ。甘糟さんの新たな人生のステージは、まだ始まったばかり。地方移住を考えている皆さんへメッセージをいただきました。
「さくら市は、私の長所や可能性を引き出してくれたまちです。もし、今の環境で自信をなくしているなら、思い切って場所を変えてみるのも一つの手だと思います。温かく迎えてくれる人がいて、あなたの『やりたい』を応援してくれる場所が、きっとありますよ」

写真左手前が甘糟さん。左奥が移住定住推進係の岩崎さん。自身がさくら市と出会うきっかけになった「ふるさと回帰フェア」のさくら市の出展ブースにて。「移住者を支える側」として、地域おこし協力隊の仲間とともに
移住者を支える人――
栃木県さくら市 総合政策課 移住定住推進係 副主幹兼係長 越智さん
移住を検討している方に、心から信頼される存在として
さくら市は、人口約43,000人のコンパクトなまちですが、暮らしやすさと住みやすさが何よりの自慢です。実は、栃木県内にお住まいの方が移住先に選ぶケースも非常に多く、「県民に選ばれるまち」でもあるんですよ。年少人口比率が県内1位なので、子育て環境を重視するファミリー層や、利便性も残しながら田舎暮らしがしたいという方に最適です。
知名度はまだ低いので、相談時は「宇都宮の右上、宇都宮駅から3駅」や、東京との位置関係など、地図で距離感を伝える工夫をしています。
甘糟さんとはふるさと回帰支援センターが主催する移住イベントで出会いました。真面目に話を聞く姿勢や、挑戦したいという熱意、そして幼少期の田舎の思い出をうかがい、インフルエンサーの仕事と移住ツアーをすすめました。
さくら市は本当に住み心地が良いまちです。迷っている方は、ぜひ一度遊びに来て、この暮らしやすさを体感してください!
<Key Word:ふるさと回帰フェア>公益財団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構が主催する、日本全国の移住窓口が集結する、国内最大級の移住イベント。気になる地域の暮らしや仕事について現地の担当者と直接相談ができるほか、マルシェやワークショップも催される。2026年は9月12日(土)、13日(日)に東京国際フォーラムにて開催。全国から2日間で700を超える自治体・団体が出展予定。
<Key Word:オールとちぎ移住&しごとフェア>栃木県内の全25市町と県関係団体+企業・団体が大集結する、移住フェア。ゲストによるトークイベントや市町・企業ブースで情報を収集しながら県や市町の移住担当者と直接つながることができる。

さくら市地域おこし協力隊 甘糟 里奈さん / あまがす りな
埼玉県川口市出身。共立女子大学文芸学部卒業後、地元埼玉県の英語塾で事務員等を経験。コロナ禍を経て自分の人生を見つめなおし、2025年に栃木県さくら市に移住。「さくら市地域おこし協力隊」に着任。自身の感性を生かしながら「観光×インフルエンサー」のミッションに従事している。周囲を巻き込んでの喜連川温泉のPR活動をはじめ、イベントの司会等、活動の幅を広げている。
Instagramアカウント @sakura.twins0501, @ricchan_sakura