美しい海に沈む夕日に感動。海辺の町の穏やかな暮らしからやすらぎの音楽を紡ぎ出す
シンガーソングライター 杉江 薫里さん
- 移住エリア
- 愛知県名古屋市→愛知県南知多町
- 移住年
- 2022年
「きれいな夕日を見ながらコーヒーを飲みたくて」。30歳過ぎまで、都会でさまざまなことにトライしてきた杉江薫里さん。「心も体もキャパオーバーだった」。そんな時に出会ったのが、愛知県南知多町の浜辺から見た夕日でした。
移住し、シンガーソングライターとしての活動を本格化。豊かな自然と温かい人たちに囲まれた日々の中から紡ぎ出される音色は、聴く人の心に優しくしみわたります。
目次
仕事に、ダンスに、エネルギーを注ぎ込む慌ただしい日々
「やってみたいと思ったら、すぐ行動しちゃう」という杉江さんの人生はチャレンジの連続でした。愛知県幸田町に生まれ、名古屋市の美容専門学校を卒業。アルバイトをしていたアパレルショップの経営会社に就職します。バイタリティーあふれる働きぶりが評価され、数年後には店長も任されました。
忙しく働く毎日と並行して打ち込んだのが、姉の影響で高校から始めたストリートダンスでした。「表現すること、ステージに立つことが大好き」。初めは趣味で楽しんでいましたが、徐々に活動の幅を広げ、自らが代表となりパフォーマンス団体を設立します。イベント出演のほか、スクールインストラクターや振り付け、プロデュース業も手掛けるうちに、ダンスによる収入がアパレル会社の給料を上回るように。23歳で会社を辞め、ダンス一本で生きることを決めました。実家を出て、名古屋市で一人暮らしも始めます。
摂食障害をきっかけに自然体で生きることの大切さに気付く
20代を全力で駆け抜ける一方で、ある病気と闘いました。
「摂食障害です。アパレルもダンスも、ビジュアルが大事な業界。厳しい体型管理をするうちに、人前で食べられない、食べ始めると止まらないようになってしまって」
理想の見た目を追い求めるあまり、体も心も壊してしまった。そんな経験を経て、「本当の美しさ」について考えるように。
「正しく食べて、健康的にきれいになることの大切さに気付きました」
そんな杉江さんをそばで支えたのが、6歳年上の夫SAMONさんでした。メジャーデビューも果たした音楽ユニットKARUTETTOのボーカルで、杉江さんがそのミュージックビデオにダンサーとして出演したのをきっかけに知り合いました。
「私とは正反対の温厚で優しい人。不思議と話が合って、気持ちが癒やされる存在でした」
2017年、30歳で結婚。ほぼ同時に、名古屋市内にビーガン(菜食主義)カフェを開きました。
「おいしい野菜と玄米食を提供するお店です。このお店を出したのが私の転機。自然体で生きることを求めるようになり、自分の働き方も見つめ直すようになりました。常にキャパオーバーだった自分に気付いて、ダンスの活動を終えることにしたんです」

移住を決めるきっかけとなった千鳥ケ浜の夕景(愛知県南知多町内海)
歌手活動の原点は「自分らしく生きる」
パフォーマンス団体を整理し、心にゆとりができた杉江さんが次に始めたのが音楽でした。
「もともと歌うことが好きで、ダンスパフォーマンスにも歌を取り入れていました。夫との毎日にも音楽があった。自然な流れでウクレレを弾きながら歌うようになり、作詞作曲も始めました」
2020年にはシンガーソングライター・Ola island(オラ・アイランド)として活動をスタート。Olaはハワイ語で「生命・生きる」という意味。「自分らしく生きる」という杉江さんの原点を表しています。

Ola islandとしてライブイベントに出演する杉江さん
自然に近い暮らしを求め、南知多町へ
考え方、働き方を転換した結果、芽生えたのは「もっと自然に近い場所で暮らしたい」という思い。真っ先に浮かんだ地が南知多町でした。
「最初に訪れたのは夫のライブで行った篠島。昔ながらの文化が大切にされていて、会う人皆が優しい。大好きになって、結婚式も篠島で挙げました」
ただ、移住するとなると、離島暮らしはハードルが高い。そんな時、当時、南知多町でゲストハウスを経営していた久米さん夫婦に出会います。音楽イベントも行う久米さんのゲストハウスをたびたび訪れ、南知多町をより深く知るように。

南知多町との縁をつないでくれた久米さん夫妻(右から杉江さん、久米さん夫妻、SAMONさん)
「特に惹かれたのが、千鳥ケ浜から見た夕日です。この景色を見ながら暮らしたいと思って」
折しも、海を一望できるマンションに空きが出たため、2022年に夫婦で移住しました。
「知り合いもたくさんできていたので、すぐになじめました。夫は田舎暮らしの経験がなく、最初は行く先々で声をかけられる環境に戸惑っていましたけど、今はそれも楽しんでいます」
移住後は歌手活動を本格化。ワンマンライブのほか、各地の音楽イベントを回っています。テーマは「生きることを謳歌」。自然豊かで、人とのふれあいの多い南知多町での暮らしから、優しく伸びやかなオリジナル曲を生み出しています。ミュージックビデオには大好きな千鳥ケ浜で歌う様子も。
自分に合う移住先を見つけるコツは「ちょっと滞在してみること」
特に行政サポートも受けずに行った移住ですが、持ち前の行動力で、地域にも仲間の輪を広げています。2025年秋には、盆踊りや和太鼓など町内の文化活動を一同に集めたイベント「祝祭」を企画。クラウドファンディングで協力者を募り、開催しました。
「移住を経験して、まちづくりにも興味が湧いてきたんです。南知多町の観光はかつてほど元気がなくなっているけれど、良い伝統や文化はたくさんあって、うまく宣伝できていないだけだと感じました。住んでいる人たちにわが町の魅力に気付いてもらい、より元気な町になればと思って」
イベントは大成功。
「観光客が多く来る土地柄なので、皆さんオープンハート。こちらが心を開けば、温かく迎え入れてくれます」
名古屋市まで車で1時間ほど。電車でのアクセスも便利で、「移住しやすい地だと思います」とも。
「ゲストハウスに滞在しながら、町のことを知る時間があったのも良かった。今、移住を考えている人にも、まずはちょっと滞在してみることをおすすめします」

南知多町の伝統芸能を集め、クラウドファンディングで開催した「祝祭」の様子

シンガーソングライター 杉江 薫里さん / すぎえ かおり
1986年愛知県幸田町生まれ。専門学校卒業後、名古屋市のアパレル会社に勤務しつつ、ダンスパフォーマンス団体を立ち上げ、イベント出演などを行う。2017年に音楽グループでボーカルを務める夫と結婚し、名古屋市内にビーガンカフェを開店。ダンス活動を終える一方、歌とウクレレを始め、2020年からOla island(オラ・アイランド)名義で歌手活動をスタート。南知多町の砂浜と夕日に魅せられ、2022年に移住。シンガーソングライターとして各地でライブ活動を行っている。