自然に抱かれ、地域の人々と歩む 移住して見つけた豊かな生き方
着物リメイク作家 岡本 里枝さん
- 移住エリア
- 愛知県内→愛知県豊田市
- 移住年
- 2023年
写真は、築100年の古民家に移住した岡本里枝さん(右)と、夫の巧太さん
澄んだ空気の中、鳥のさえずりが響く豊田市上小田町。標高360mの山間に着物リメイク作家、岡本里枝さんの住む古民家があります。夫の巧太さんと名古屋の中心部から移住して3年目。四季折々、山の恵みに舌鼓を打ちながら、盆踊りや神社の催事など地域の行事にも積極的に参加して田舎暮らしを楽しむ2人。「自然に囲まれ、人に恵まれ、リラックスした暮らしが本当に楽しいんです」とすがすがしい笑顔で迎えてくれました。
コロナ禍で見つめなおした生き方
名古屋市千種区でオリジナルのバッグや財布を制作・販売するお店を経営していた岡本さん夫妻が移住を考えたのは、コロナ禍がきっかけでした。
「パンデミックの中で衣食住の大切さを考え直し、自然豊かな場所で静かに暮らしたいと思ったんです」
決め手になったのは2020年夏至に行った岐阜県中津川市にある宿場町・馬籠への旅行でした。朝早く散歩した時、山に水蒸気が立ち上る様子を目にして、「こんな風に自然豊かな所で、手仕事ができたらどれだけ幸せだろう」と、都心を離れる決心をしたそうです。

里枝さんはYoutubeで着物のリメイク方法も紹介している
空き家バンクで見つけた築100年の古民家
移住先は里枝さんの実家に近い豊田市に絞りました。住むなら古民家にしたいと思い、まずは空き家バンクに利用者登録をしました。条件は、修繕の必要がなく、すぐに住むことができ、水回りもきれいで、畑もできる物件。ネットで写真を見ながら探していると、市内で2件の候補が見つかりました。そのうちの1件は、募集の締め切りが近かったため、2人は急いで申し込みます。
豊田市では、空き家バンクを利用して入居を希望する場合、地域の方々と事前に面談する機会が設けられています。面談では、これからの生活や家族、仕事のことなどを話します。面談に進んだ岡本さん夫妻でしたが、最初の物件は残念ながら他の候補者に決まってしまいました。
気持ちを切り替え、1週間後には、もう1つの候補だった現在住んでいる家を内覧しました。ネットで地図を確認し、「紅葉の名所、香嵐渓に近いな」と思っていましたが、実際には香嵐渓に近い低地ではなく、グネグネと曲がる山道を進んだ先に物件はありました。「こんな山の中なの!」と驚きつつ、これまで体験したことがない山での生活を想像し、胸が高鳴った里枝さん。唯一、冬は日が当たりにくいことが気になったそうですが、「ここがいい!」と強く思ったそうです。
見学の1週間後には、地域の面談に進みます。自治会長さんらを前に、手仕事を続けたいことや、移住への気持ちを丁寧に話し、無事に面談を通過することができました。1カ月後には名古屋にある店を閉め、名古屋から豊田まで1時間半の道のりを1週間で10往復して引っ越しを終えました。
「本当に良い物件に出会えてラッキーだった」と話す岡本さん夫妻。

近隣の人からもらったという昔ながらの生活道具が並ぶ玄関
「空き家バンクでは若い子育て世代限定、などの条件がついている所も多いです。実はこの物件もそうだったんです。でも、若くもなく、子どももいない自分たちでも通してもらえた。条件や人によって変わることもあるので、気になる物件があったら問い合わせてみるのもいいと思います」
とアドバイスをくれました。
四季の移り変わりを楽しみながら人とのつながりも大切に
現在は古民家の半分は工房スペースとして使っています。作品をオンラインで販売しているほか、里枝さんはYoutubeで古着物のリメイク方法も紹介しています。機織りに興味のあった巧太さんは月の半分、観光施設の三州足助屋敷で実演スタッフとしても働いています。
自然に囲まれて静かに手仕事をしたいという思いで決めた移住。でも実際は「春はタケノコやワラビがとれて、初夏に梅がなったら梅干しをつけて、秋には柿が食べ放題になって。四季で移り変わる生活が楽しすぎて、今は手仕事よりそちらを楽しむことに忙しいですね」と里枝さんは笑います。料理には近くで汲める湧き水を使っています。
ただ、「自然があるだけではだめ」と里枝さんは強調します。
「私達がいま豊かさを感じられるのは、ご近所の方たちが仲良くしてくれるからこそなんです」

家の前を通りかかった近所の人と話す里枝さん
田舎暮らしでは地域コミュニティとのかかわりも深く、お祭り、合同の草刈りや集会所の掃除もあります。ただ、一見、大変そうなことも積極的に関わって楽しむのが岡本夫妻流。巧太さんは「社守(しゃもり)」と呼ばれる地元の神社の役職を引き受けて年7回の祭祀の準備を担当し、里枝さんもサポートしながら関わっています。夏には地域の色々な盆踊りにも参加しました。なかでもユネスコ無形文化遺産になっている「綾渡の夜念仏と盆踊」には、初年度は見様見真似で参加していましたが、翌年には練習会に参加して踊りをマスター。様々な活動を通じ、幅広い地域の方々と交流を深めています。
最近は、ものづくりへの意識も変わってきたようです。

十明(とみょう)神社で、地元の人と一緒にしめ縄を張り変える巧太さん(右端)
「名古屋で暮らしている時は、商品が売れることばかりを考えていました。でもここで暮らすうちに仕事も大切だけれど、田舎や自然の素晴らしさを伝えていき、自然を敬って大切にできる人がもっと増えたらいいな、というように意識が変わりました。身近なところから、自分たちでできることをやっていきたいですね」
と柔らかな笑顔を見せます。
移住を経て、自分たちなりの豊かさを見つけた2人。
「寒さも含めて、意欲と覚悟は必要ですが、それ以上に、自然に抱かれた生活はリラックスでき、心も体も喜びます。田舎暮らしを夢見る方は是非動いてみてください」
と教えてくれました。

移住後、新たに知り合った人たちと冷田(ひえだ)地区の盆踊りを楽しむ里枝さん(中央)

着物リメイク作家 岡本 里枝さん / おかもと りえ
1971年愛知県生まれ。夫の巧太さんと7年間名古屋市千種区でハンドメイドの店を経営していたが、コロナ禍で生き方を見つめなおし、2023年に豊田市上小田町へ移住。オンライン販売などで、ものづくりの仕事も続けながら、地域コミュニティとのつながりを大切に移住後の生活を楽しんでいる。
■関連リンク
Hisago&wa Instagramアカウント(@wa_rieokamoto)
YouTubeチャンネル「着物活用生活 Hisagoとwa」