伊豆大島に移住して、人とつながる仕事がしたい!
ゲストハウス「Stay Do」オーナー、シェアハウス「クエストハウス」代表、伊豆大島ジオパーク認定ジオガイド 神田 遼さん
- 移住エリア
- 都内→東京都大島町
- 移住年
- 2020年
東京の島々の中で最も大きく、最も東京に近い伊豆大島。“御神火”三原山が見守る雄大な自然と、新しさと懐かしさが同居する独特のカルチャーに彩られたこの島は、神田遼さんにとって“自分が本当にやりたいこと”を見つけて育てる大切な場所。「軽い気持ちで決めた」島への移住が、彼にどんな変化をもたらしたのでしょうか?
目次
勢いで決めた島への移住。飛び込んでみたら…
「最初は軽い気持ちだったんです。いつかは知らない場所で暮らしてみたいと思っていたので、どうすれば地方に行けるかなと調べ始めて偶然見つけたのが伊豆大島の募集。仕事と家があって、車の購入や起業などの支援も受けられるなんてめちゃくちゃいいじゃん、コレだ!と思って」
そう語る神田さんが選んだのは、“地域おこし協力隊として伊豆大島へ移住する”という道でした。それまで都内の旅行会社でヨーロッパ旅行の手配を行うランドオペレーターの仕事をしていましたが、2020年に起きたコロナ禍で旅行業界は壊滅的な状況に。「お客さんは当分戻ってこないだろう」と判断して退職を決意し、憧れの地方移住を実現する方法として協力隊に活路を見出しました。伊豆大島は未知の島でしたが、同じ伊豆諸島の神津島にキャンプでよく出かけていた縁もあり「とりあえず行ってみようか」と2020年6月に協力隊へ応募。7月に採用が決定し、9月には島へ引っ越すというスピード移住をはたしました。

協力隊時代に農家さんと一緒に開催した芋掘りと料理体験の様子
島では農産物直売所「ぶらっとハウス」のスタッフとして勤務しながら、商品開発やイベント企画などを担当。人との接触が制限されたコロナ禍のまっただ中ながらも、地元住民がよく利用するお店だったことから、移住当初から職場を通じて自然といろんな情報を教えてもらえたとか。
「島ってテレビ映らないのかな、閉鎖的で村八分とかあるのかなと思っていたんです(笑)。だから、思っていたより都会で快適というのが最初の印象。車社会なところや、山と海が近い景色の感じもどこか故郷の市原に似ていてしっくりきたし、職場で島の方からいろいろ教えていただけたこともラッキーでしたね。ただコロナで店が休業していたので、仕事の後に行くところがないのは困りました。知り合いもいないし毎日どうしようと必死で、開いている喫茶店に入り浸ってマスターにひたすら話しかけた記憶があります」

伊豆大島のランドマーク、三原山には登らない年はないというほど行く大好きな場所
多彩な人が行き交う大島で、芽生えた思い
地域おこし協力隊の任期は3年間。「卒業後のことは何も考えていなかった」という神田さんですが、次第に「ここで観光業の仕事がしたい」という思いが芽生えたといいます。きっかけとなったのは、移住1年後に島で親しくなった仲間たちとシェアハウス「伊豆大島クエストハウス」を立ち上げたこと。シェアハウスをやらないかと誘われて「面白そう!」と感じた彼は、手に入れた空き家を仕事後や休日の時間をフル活用してリノベーション。クラウドファンディングにもチャレンジしながら、オープンにこぎつけました。

大きなきっかけとなったシェアハウス。現在も代表として利用者のサポートを行っている
伊豆大島には壮大な景観と歴史深い文化がある一方、ユニークな試みやチャレンジを受け入れる土壌もあります。旅行者やビジネスマン、二拠点居住者に移住希望者、さまざまな人たちの思いに触れるうちに、神田さんは「あ、自分は人のお世話をするのが好きなんだ。もっと人と関わりたい!」と気づいたといいます。そこで彼は「観光ガイド」と「宿の開業」という2つの目標を胸に邁進することに。まずは島内で講習を受けて、伊豆大島ジオパーク認定ジオガイドの資格を取得。日本ジオパークにも認定されている大島の案内役として、2022年からガイド業をスタートさせました。
「デビュー戦はとにかくガチガチで、何を喋ったのか記憶がないくらい緊張しましたけど、やっぱりお客さんと接する仕事が好きだなって改めて感じましたね。ガイドはお客さんと現地に行って案内するライブな仕事。変わったお客さんが来ることもありますし、自然相手ですからトラブルが起こることもあります。でも、トラブルがあったほうがお客さんとの距離がぐっと近づいたりして、断然面白いんですよね。むしろマニュアルどおりに進むほうが、つまらないなって思ってしまいます」

波浮港の風景。風待ち港として賑わった風情にある街並みが人気
大島にいると、やりたいことがどんどん湧いてくる
さらに2023年10月、神田さんは島南部の波浮港エリアにゲストハウス「Stay Do」をオープンさせました。波浮港はかつて遠洋漁業の中継地として栄え、多くの詩人や文豪に愛されたノスタルジックな風景が色濃く残るエリア。大島の注目スポットとしてにぎわう波浮港の中心街にあった元化粧品店の古民家を改修し、2組限定のゲストハウスを開業しました。
「物件を見つけるのは大変で、1年近くかかりましたね。でも波浮港は移住者に対してすごくウェルカムな雰囲気があって、商店や飲み屋やどこに行っても地元の人を紹介してくれたり、イベントに誘ってくれたりしたんです。昔から旅行者や業者を受け入れてきた港の歴史がそうさせるのかもしれませんが、目標だった宿の開業にこぎつけられたのは波浮港の人のおかげだと思っています」

元化粧品店だった古民家を改修したゲストハウスStay Doの共有スペースには、懐かしい道具や甲冑などが飾ってある
ジオガイドとゲストハウスという2つの柱ができたことで、今後は旅行会社と提携した独自のツアーや学生団体の受け入れ、インバウンド向けのツアーを本格化しようと計画中。また2025年には東京の島々で活動する地域おこし協力隊同士が交流できる場をつくろうと、東京諸島地域おこし協力隊ネットワークを立ち上げ、とりまとめ役としても活動も始めました。
「やりすぎかなと思ったりもしますが、基本的に人のお世話が好きなので、どうしても気になっちゃうんですよね。直感で動くタイプなので、コレ!と思ったらカラダが勝手に動いてしまう。性分なのでしょうがないかなとあきらめていますが、直感でいくと自分のせいにできるので納得できる気がしますね。あと最近結婚しまして、妻がいることでなおさら攻めの体制になったかも。私が悩んでいると『迷っているならやれば? 失敗したら私が稼いでくるから』と背中を押してくれるんです。こういうパートナーがいてくれるだけで心強い」
大切な家族を応援団に、伊豆大島を拠点とした神田さんのフィールドは今後も広がっていきそうです。

夏になると週末ごとに島内各所で開催される盆踊り。奥様と一緒に盛り上がる!
迷ったら、まずは飛び込んでみる
最後に、伊豆大島へ移住を考えている方にメッセージをいただきました。
「移住者って、僕みたいにあまり考えずに移住してくる人と、何度も通って入念に準備してから移住する人の2パターンがあると思っています。もちろん事前にしっかり準備することも大事ですが、あまり考えすぎるとバイアスがかかって現地になじめなくなることもあるなと感じます。まずは飛び込んで、いろんな人と話したり聞いたりしていると結構サポートしてくれる人が現われるんですよ。頼れる人が出てきたら、その人を介して交友関係を広げるのがいいのではと思います。
ただ、頼りすぎて礼儀を欠くのはダメ。島では口約束とか、その場の勢いで話されたことを真に受けると後でトラブルになることがあります。関係する人とはきちんと話をして筋を通すことが、地味だけどすごく大事なプロセスだと思います」

波浮港の祭禮にて、地元のみんなと(左から2番目が神田さん)

ゲストハウス「Stay Do」オーナー、シェアハウス「クエストハウス」代表、伊豆大島ジオパーク認定ジオガイド 神田 遼さん / かんだりょう
千葉県市原市出身。旅行会社で海外向けの営業職として約5年間勤務後、コロナ禍をきっかけに地方移住を考え、2020年10月に地域おこし協力隊として伊豆大島に移住。農産物直売所「ぶらっとはうす」に勤務するかたわら、2021年よりシェアハウス「クエストハウス」の運営スタッフ、2022年より伊豆大島ジオパーク認定ジオガイドとして活動。2023年7月には波浮港地区でゲストハウス「StayDo」を開業し、協力隊卒業後も伊豆大島を拠点に幅広く活動中。
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