商いに、店舗という場に、多様な価値観を持たせる。 地域の編集者が提案する、これからのシャッターの開け方。
栗原市地域おこし協力隊 柴崎 愼大さん
- 移住エリア
- 東京都→宮城県栗原市
- 移住年
- 2024年
建築を学び、東京で編集者として働いていた柴崎愼大さん。柴崎さんが出会ったのは、宮城県・栗原市の商店街に掲げられた「へんちくりんを100人集めたい」というビジョンでした。
地方の商店街で実現する「新しく、かっこよく、楽しい働き方」とは?そして、地域の一員になるために必要なこととは。「移住を受け入れる側」の視点からもお話をうかがいました。
目次
「点」ではなく「面」で見た栗原のまちの可能性。商店街のまちづくりビジョンに共鳴して。
神奈川の大学・大学院で建築学を専攻し「点(建物単体)ではなく、面(その周辺エリア)で捉える視点」を学びました。その後は東京の出版社に入社。7年間、店舗デザインの専門誌の編集者として勤務しました。国内外の店舗を取材する日々は刺激的でしたが、建築を学んでいたこともあり、次第に私も店舗をつくる側の立場に立ちたいと思うようになりました。そんなとき、地方で取材する機会があり、地域おこし協力隊が開業した店舗を訪れ、地域づくりにおける商空間の可能性を目の当たりにしました。地域づくりは、「完成形」だけではなく地域と関わる「プロセス」も大事です。地域コミュニティとの交流機会が多く、新たな生業づくりへの挑戦ができる、地域おこし協力隊に興味を持つようになりました。
出身地・宮城県周辺で場所探しをする中で、「面白い商店街がある」と紹介されたのが、栗原市の六日町通り商店街でした。2023年夏、現地を訪れて六日町合同会社の杉浦風ノ介さんと出会いました。そこで聞いたのが「この商店街にへんちくりんを100人集めたい」というまちづくりのビジョン。一見、突拍子もないようですが、商店街は元々、個の集合体です。個性的な店主を集め、地域を盛り上げたいというビジョンに共感しました。風ノ介さんは商店街の地域おこし協力隊の導入にも取り組んでいました。

杉浦風ノ介さん
着任した協力隊の中には商店街周辺エリアの家賃の値下げなどに貢献したメンバーもいました。移住者が挑戦しやすい環境が整ってきたことで、商店街周辺での新規開業は、この10年で延べ47件にもなっています。かつて取材する中で出会ったような地域づくりの実践者がこの商店街にもいて、開業にまでつながっている。そのことに安心感がありました。出版社を辞め2024年4月栗原市に移住、地域おこし協力隊に着任しました。ミッション名は「シャッター開ける人!」です。
祭りに飛び込み、汗をかく。その行動が地域との関係性を育む。
移住先を選ぶ際に重視したのは、祭りがあるかどうか、でした。このまちには300年続くと言われる「くりこま山車祭り」があります。5月下旬から皆で集まり、山車を一からつくるのですが、昨年は私も山車の制作に積極的に参加しました。おじいちゃんもおばあちゃんも移住者も関係ない。同じ目的に向かって動く祭りは、コミュニケーションには最高の場です。
「地方に行けば自然に受け入れられる」というのは幻想。自分から地域の輪に飛び込み、関係性を勝ち取りに行く姿勢が大切だと思います。共に楽しみ共に汗をかく中で、ようやく地域の一員になれた気がしました。

くりこま山車祭り
まちの魅力を再編集し発信することで、人を呼びこむ。地方でも、かっこよく楽しく働く姿を示すチャンス。
今は延床面積約400㎡の複合施設(宿泊施設・テナント・カフェラウンジ)のオープンに向け奔走中です。単に店を増やすことが目的ではありません。ここでは、商店街での「新しい働き方」を提示したいと思っています。
編集者として培ったスキルを活かし、平日などのお客さんが少ない時期は、地域の魅力を取材・発信し「旅の目的」をつくる。週末には、宿や店舗を運営し実際に人を迎え入れる。「店舗運営 × 編集」という掛け算によって、地方でも自分の特性を生かし、かっこよく働く姿を若い世代に見せたいと考えています。ありがたいことに風ノ介さんをはじめ、協力隊の先輩や地元の方々など、応援してくれる方がすでにいます。
協力隊としての任期もあと1年ほど。時間もお金も限られているプロジェクトですが、共感し支えてくれる人の想いが、重かった商店街のシャッターを押し上げる力になっています。

移住支援者の視点から――六日町合同会社 代表社員 杉浦風ノ介さん

移住者が全力で走れる環境をつくる。
私の役割は、柴崎くんのような若者が全力で走れるよう「地ならし」をしておくこと。地域では移住者のやることに、時に厳しい目を向けられることも。そんなとき、商店会が「自分たちの仲間だ」と守る。その防波堤があるからこそ、よそ者が安心して「へんちくりん」な個性を発揮できるのです。植物と同様、多様な人が混在することで、健全で生命力の強い地域ができると思います。
今後10年で100人の面白い人を増やし、人が人を呼ぶ連鎖を生みたい。江戸時代から続くこの街を未来につなぐために。この商店街の成功を分析し全国へ広げ、日本を少しでも面白くできたら。そんな未来を想像しながら、今日もこの街を楽しんでいます。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと特別号『移住する人 支える人』」の内容をWEB用に一部再構成したものです)

栗原市地域おこし協力隊 柴崎 愼大さん / しばさき みつき
宮城県仙台市出身。神奈川の大学・大学院で建築学を専攻後、東京の出版社に入社し、店舗デザインの専門誌の編集者として7年間勤務。
2024年4月、宮城県栗原市に移住。地域おこし協力隊として着任し、空き家を活用した場づくりとメディア発信で、地域と都市をつなげる活動に取り組む。