高校生の頃から憧れていた函館暮らし。大好きなGLAYの聖地で、いつか移住支援に携わりたい。
会社員 緒方 小百合さん
- 移住エリア
- 埼玉県→北海道函館市
2025年7月、GLAYの聖地・函館市へ単身移住した緒方小百合さん。移住後に見えてきたのは、街のリアルな魅力と課題でした。「大好きなこの街の未来に、自分は何ができるのか」。リモートワークを続けながら模索する緒方さんの視点から、観光地ではない函館の「いま」と「これから」を紐解きます。
さらに、移住を支えた「ふるさと回帰支援センター・東京」の北海道相談員の視点も交え、移住のリアルをお届けします。
目次
住環境の悩みをきっかけに、相談から2か月で移住を決断。
函館との出会いは、高校の修学旅行。港町の風景、海と山がすぐそばにある距離感、街全体に流れる落ち着いた空気。そのすべてが心に残りました。そして何より、中学生の頃からファンだったロックバンド・GLAYの聖地であること。「GLAYの伝説はここから始まった」と書かれた当時の地図を、今も大事に持っています。
社会人になり、埼玉で単身生活がスタートしました。勤務地は都内。不動産業、製造業、IT業などを経験。仕事にはやりがいを感じていましたが、暮らしの面では次第に違和感が募っていきました。狭い部屋、気になる騒音。住環境のストレスが大きくなり、引越しを考え始めました。テレワークが可能だったので、群馬や栃木まで範囲を広げて物件を探しましたが、なかなか「ここだ」と思える場所に出会えませんでした。
そんなとき、ふと頭をよぎったのが函館でした。いつか、函館に住みたい。10代の頃から心にあった場所なんです。現実的に考えたことはありませんでしたが、今は働き方も柔軟。それに、真冬に訪れた函館は想像より雪が少なく、ここなら暮らせるかもしれないという感覚が、心の片隅に残っていました。ただ、実際の生活がイメージできず、不安もありました。
そこで訪れたのが、ふるさと回帰支援センター。北海道相談員の杉原左織さんに、交通や雪の不安を率直に相談しました。「函館は道内で3番目に大きな都市です。公共交通も整っているので、車がなくても十分暮らせますよ」。その言葉に、不安がすっと期待に変わりました。オンラインで見つけた物件は埼玉の家の倍ほどの広さ。相談からわずか2か月での移住の決断でした。

コンパクトな街だからこそ可能な「車なし生活」。
2025年7月、念願の函館へ移住。買い物などへは市電やバスを利用し、車がなくても日常生活で不自由を感じることはほとんどありません。人混みや慌ただしさが苦手な私にとって、人が多すぎず、街の規模感がとても心地よいです。家から海までは、市電で約30分。夏には、海に沈む夕焼けを見に出かけるのが楽しみでした。日常の延長に、こんな景色がある暮らしに、いまだに少し驚いています。
実は車の免許は持っています。ただ自分には向いていないと感じ、車なしで暮らせる移住先を探していました。函館はその条件にぴったり。最近は、そんな函館暮らしをnoteで発信しています。移住を検討している方の中には、「地方=車必須」と感じている方も多いと思うので、少しでも参考になればうれしいです。一方で、暮らしてみて分かった課題もあります。駅前のデパートが閉鎖されるなど、商業施設の衰退は深刻です。若年層向けの店舗や働く場所が少なく、若者の流出が続いてしまうのでは、という不安も感じています。

バス会社による函館の地図。手書きならではの温かみが伝わってくる
観光だけではない函館の魅力を、移住者の視点で届けたい。
移住を決めた背景には、GLAYの聖地・函館の未来に、自分も貢献したいという思いが、深層にあったのかもしれません。函館は人口減少と高齢化に直面しています。人口が減り続ければ、大好きなGLAYの故郷が、衰退してしまうのではないか。そう思うと、胸がざわつきます。観光客を呼び込むだけでなく、移住者に向けた具体的な支援が必要だと感じています。GLAYのTERUさんは、市内各所で絵画を展示したり、芸術祭の開催を検討したりと、芸術家の移住を呼びかけています。地域の方からも愛される存在です。私も一人のファンとして、そして新しい移住者として、函館の未来につながる仕事ができたらと思っています。
最近では、二地域居住先としても注目されています。夏でも平均気温は25度ほど。東京と函館を行き来する暮らしを選ぶ人もいます。いきなり移住するのが不安な方は、二地域居住から始めるのも良い選択肢だと思います。今はリモート勤務を続けていますが、来年からは次のステップを考えています。移住者を増やすために、若者の流出を防ぐために、この街で何ができるのか。12月には、函館市地域交流まちづくりセンター主催の移住者交流会にも初めて参加し、他の移住者たちと情報交換もできました。移住してまだ半年。これから、自分なりの関わり方を模索していきたいです。

移住者交流会の様子
移住支援者の視点から――「ふるさと回帰支援センター・東京」北海道相談員 杉原 左織さん

車なしでも大丈夫。移住後の暮らしを、いかに具体的に描いてもらえるか。
北海道への移住を検討される方には、「ぜひ、冬の生活を体験してください」と伝えています。冬ならではの景観の美しさはありますが、雪かきも日課ですから。その分、春には桜や梅が一斉に咲き、夏には海でバーベキューや登山など季節ごとの楽しみがあります。
緒方さんは「思い切って函館に住んでみたい」と相談に来られました。函館市内は公共交通が発達しており、車がなくても生活できるイメージを持ってもらうことが、最初の支援でした。一方で、都市部以外では車があると行動の幅が広がるのも事実です。「雪道の運転が不安」という声も多いですが、道路や駐車場は広く、慣れれば走りやすい環境です。
【関連リンク】「ふるさと回帰支援センター・東京」北海道相談窓口
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと特別号『移住する人 支える人』」の内容をWEB用に一部再構成したものです)

会社員 緒方 小百合さん / おがた さゆり
埼玉で不動産業やIT業を経験後、2025年7月に憧れの地・函館へ移住。現在はテレワークで勤務しながら、noteを通じて現地の情報を発信している。