ふるさと回帰フェア2025に参加して「ふるさと、してる?」 |地方暮らしのススメ|FURUSATO

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ふるさと回帰フェア2025に参加して「ふるさと、してる?」

ふるさと回帰フェア2025に参加して「ふるさと、してる?」 | 地方暮らしのススメ

2025年9月20日(土)~21日(日)に東京国際フォーラムで開催された移住相談イベント「ふるさと回帰フェア2025」を、ライターの大越元さんにレポートしていただきました。

東京以外の選択肢もある?

東京で生まれ育った私がはじめて「地方で暮らしたい」と考えたのは、小学生のときでした。
新宿のデパ地下でタイムセールの波に揉まれながら
「東京に生まれてしまったけど、人ごみが苦手かもしれない」
と、子供心に思ったのです。

地元では、毎日どこかで再開発が行われ、風景がどんどん変化していました。私が高校に上がるときには、近所のラーメン屋さんも文具店も、30階建のオフィスビルへと変わっていました。

そうしてまちから商売の風景が消えて、あることに気づきました。ふるさととは風景であり、風景をつくるのは、人の営みなのでは?

「美しい暮らしが美しい風景をつくる」という柳田國男の言葉を知り、大学では民俗学を学びました。そして4年生のとき、自分の進路を決める講義「都市と農村関係論」と出会います。

講師は、ふるさと回帰支援運動を立ち上げたばかりの高橋公理事長。
作家・立松和平さんとの大学来の関係を間近で見て「自分たちもこんなふうに生きてみたい」と思いました。

「運動」という言葉は耳慣れないものでしたが、いろいろな人たちが集い、肩書・立場・年齢・地域・性別を超えて語り、未来を協創する「お祭りのような存在」だと思いました。わくわくしたのです。

社会に出てからは、編集者として3年ほど東京と地方を行き来したのち、地方へ移りました。それから間もなく10年を迎える今だからこそ、あらためて自分に問いかけてみたいことがあります。

「ふるさと、してる?」

入場前から期待が高まる

700のふるさとを求めて

「ふるさとをする」ってどういうことでしょうか。
地方に移住することでしょうか。
地元で働き暮らすことでしょうか。
大地に触れて生きることでしょうか。
ふるさと納税をすることでしょうか。
それとも、人と人の間を生きることでしょうか。

その答えは人の数だけあると思いますが、私自身にとっての答えがそこにある気がして、16年ぶりにふるさと回帰フェアへ参加しました。

会場には2日間で延べ700もの地方自治体が集まり、初開催となるワークショップや特産品を揃えるマルシェ、そして移住相談ブースが広がっていました。

まさに、700のふるさとが一同に集まる場。中でも、印象的だった2つのブースがあります。

マルシェには全国から新鮮なフルーツや野菜が。美味しそう

1.栃木県鹿沼市

「ふるさと探しは、ともだちをつくることからはじまる」。
そう気づかせてくれたのは、9万人ほどが暮らす栃木県鹿沼(かぬま)市のブースでした。

迎えてくれた金子さんがいいます。

「鹿沼市は、人の右手によく似た形をしています。右手を広げてみてください。指のように川が流れていて、この川に沿って人が暮らしています」。

自分の手を広げてみると、そこに鹿沼市が広がっているように感じられました。ちなみに辻井さんは“手首あたり”に暮らしているそう。

「市役所からも近い市街地ですけど、ご近所さんからお野菜をいただくことがあります。もうちょっと指先の方に行くとね、回覧板と一緒におつけものが回ってくることがあります」。

まちなかではお野菜、山の方はおつけもの。ご近所付き合いがちゃんとあるんですね。

「だけど、土足で踏み込んでくるようなことはありません。求めたら助けてくれるちょうどいい距離感。栃木の人は、人見知りでおせっかいなんです」。

なるほど。

(左から)筆者、金子さん、佐藤さん、辻井さん

 

ちなみに仕事についても相談です。編集者の経験を活かせる職場はありますか?
すると佐藤さんが「…ハローワークには情報が出ていないんですけどね」と、ある会社のリクルートサイトを見せてくれました。
生活と仕事をセットで相談するのは、はじめての経験でした。

結びに再び辻井さん。
「よかったら鹿沼市へ遊びにきてください。体験住宅もあります。おいしいカレー屋さんや居心地のよいカフェを案内しますよ。ちなみにわたしは、鹿沼市のゲストハウスに泊まったことで、京都から移住しちゃったんです」。

2.兵庫県神戸市

続いて訪れたのは、150万人が暮らす神戸市のブースです。
迎えてくれたのは小園(こぞの)さん。

「駅徒歩3分で泳げるビーチも、純喫茶でモーニングも、アーケードの商店街も、百貨店の近くも。神戸市は、選択肢がゆたかなんです」。

話しぶりからは、神戸が好きなことが伝わってきます。聞けば、小園さん自身も山口県からの移住者。大学進学を機に住みはじめた神戸で、ある市場と出会いました。昭和の匂いが残る風景に一目惚れしたそう。

「その市場がね、今では子どもの通学路なんです」。
学校帰りに、お豆腐屋さんで“お土産”をいただいて帰ってくることもあります。

神戸市の小園さん(左)

 

そんな小園さんに、次々と質問をしてみます。
家賃相場はどうでしょうか?
「東京に比べるとずいぶん手頃です」と見せていただいたのは路線価図。

通勤時間についても
「神戸市内はもちろんのこと、大阪へ通勤しても、首都圏に比べて通勤時間が短縮できる場合が多いです」。

では、地方移住といえば、自動車は必須でしょうか?
「わたしは、車を手放しました。たまに家族で出かけるときは、カーシェアでじゅうぶん。子どもの送り迎えや通勤手段は電動自転車でしています」。

そして、最後に小園さん。

「神戸は坂が多いんですよ。最初のうちは大変でした。でも、だんだん好きになってきましたね。坂を上りきって、振り向くと景色が最高です!」

ふるさととつながって生きる

「人は、ふるさととつながって生きると、いきいきするんだ」。
鹿沼市と神戸市をはじめ、いろいろなブースを巡って、感じたことです。
そして、ふるさととのつながり方は、人の数だけあります。そのことに気づかせてくれたのは、私と同じ参加者のみなさんでした。

2日間で3万300人が参加したふるさと回帰フェア2025。学生から新社会人、子育て世代、そしてシニアまで多年代の人が集う会場を歩いていると、いろいろな声が聞こえてきます。

「自伐型林業をやってみたくて!」
「実家の耕作放棄地を耕して、お茶をつくりたいんです」。

そうして一人ひとりが思いの丈を話せる場をつくり、ふるさとで生きる人と出会い、つながる中で、ふるさと回帰運動は広がってきたのだと思います。

東京で生まれ育った私は、10年前に地方へ移住しました。今住んでいるまちは地元ではありませんが、窓から眺める山や、仕事場へ向かう途中に見える湖、そして何気ない日常会話に懐かしくなったり、すっと気持ちを助けてもらうことがあります。

そして、ふるさと回帰フェア2025への参加をきっかけとして、毎日の暮らしを小さく見直しはじめています。

「ふるさと、してる?」

その問いは、まだまだ続きます。

大越 元(おおこし はじめ)
東京都出身の編集者。日本仕事百貨を経て、2016年に関西へ移住。自宅の94%を開放する「toi」を営む。自らの移住体験をふまえ、ふるさと回帰・移住交流推進機構の求人募集、移住イベントPR、移住者インタビューなどの記事を制作する。
こちらの記事は、公益社団法人 ふるさと回帰・移住交流推進機構の情報誌「100万人のふるさと」2025年冬号 掲載の内容一部再構成したものです。