山形県に住んだら逃れられない「芋煮会」とは
こんにちは、山形出身・移住コンシェルジュの多田です。
9月になり、山形の芋煮が恋しくなるシーズンになりました。
山形の芋煮というと、県外でも郷土料理店や居酒屋で出されるようになり、一度は聞いたことがある人もいるのではないかと思います。
郷土料理というと、年に一度は年配の方が食べるもの?という印象をお持ちの方もいるかもしれませんが、山形の芋煮事情は県民にとって、そんなに軽いものではありません。
この季節になると、家で芋煮、食堂で芋煮、飲み屋で芋煮、給食も芋煮、そして休日の出かけ先は芋煮会。
どこへ行っても、芋煮を見ない日はありません。
山形に住んだら、きっと逃れることはできないであろう、
【山形の芋煮】そして【芋煮会】について、ご説明します。
まずはじめに、芋煮とは、
里芋、ねぎ、こんにゃく、牛肉、ごぼうなどを基本具材とし、砂糖、酒、醤油(一部の地域は味噌)で煮込んだ鍋料理です。
山形だけでなく、宮城県や福島県、岩手県でも食べられている郷土料理です。東北の地域ごとに様々な芋煮があります。
芋煮会とは、
発祥は、1600年代、山形県を流れる最上川の最終船着き場で船頭たちが、河川敷で鍋を作って食べたのがはじまり。発祥の地は中山町と言われています。
そしてその文化が県民の恒例行事になったのが【芋煮会】。
夏の暑さが和らぎ、里芋の収穫が本格的になる9月~11月の期間、数名~数十名単位で河川敷に集まり、芋煮の具材を持ち寄り、イチから芋煮を作って食べ、交流するイベントです。
芋煮会スキルは幼少期から教育が始まる
山形県内では、小学校の野外活動で、クラスのグループごとに芋煮会を開催する機会があります。
包丁など使える年齢になると、河川敷で石の釜戸をつくり、火をおこし、薪をくべ、野菜や肉を切り、味付けをして皆で食べるところまでの、一連の流れを小学生だけでもできるように教育されるので、山形県内で育った人は、大人になる頃にはほぼ全員が芋煮鍋奉行になれるスキルを持つことになります。
(昭和生まれの筆者が幼少の頃は釜戸から作りましたが、現在はそこまでやっていないかも)
芋煮会で芋煮スキルを持つ出身者が集まると、誰もがやるべきことを熟知し、自主的に準備に取り掛かるので、指導する人は存在しなくとも、あっという間に芋煮が出来上がります。
もし、他県から移住して芋煮会に呼ばれる機会があったら、とにかく山形県出身者に聞いてみてください。
作り方の全てが分かるはずです。
秋の交流イベントはとにかく「芋煮会」
秋が近づくと、あらゆるグループで集まる話になれば、兎にも角にも芋煮会。「秋だから芋煮会しようよ」という声が一声出れば、河川敷で芋煮会を開く事になります。
芋煮会で集まる単位は様々。
家族と、友達と、同級生と、会社の仲間と、学校で、PTAで、地域の子ども会で、部活で、サークルで…。
所属するグループが増えれば増えるほど、芋煮会の機会が増えていくので、交流が多い人だと毎週のように芋煮会に参加しているという人もいます。
全国的には、河川敷で交流イベントというと、バーベキューが一般的だと思いますが、山形県に住むと、バーベキューよりも芋煮会へ行く機会がとにかく増えていきます。
芋煮会の一連の流れがこちらのブログでも詳しく紹介されていました↓
■はじめての「芋煮会」<real local>
山形の芋煮インフラと熟練スキルはすごかった
芋煮会のためのインフラレベル
ここまで県民に親しまれている芋煮会。
芋煮会を成功させるために、官民総力をあげたインフラ整備がなされています。
河川敷
芋煮会場として人気の河川敷は、きれいに芝が刈られ、子どもが走っても大丈夫なように整備されるのはもちろんの事、洗い場やトイレ、釜戸を置きやすい平場や、既に釜戸が置かれている場所もあり、屋外であっても会場インフラは心配ありません。
河川国道事務所では、芋煮会ができる場所一覧も公開していますが、掲載場所以外の公園でも、実は芋煮会用の設備を完備している、なんていうスポットもあり、安全に芋煮会が楽しめる場所となっています。
スーパー・コンビニ
また、山形県内のスーパーもこの時期になると芋煮会コーナー商品と貸し出しコーナーがてんこ盛り。
なんとこの時期、スーパーで買い物をする方には芋煮会で必要な備品、鍋、おたま、かまど、ゴザ、バーベキューコンロ、トングを貸し出してくれるんです。その貸し出し費用、なんと無料!!!!
買い出しで必要な食材もワンコーナーで揃うようにセットされているお店が多く、芋煮会がスムーズに準備できるように各スーパーも力を入れています。
ちなみに、コンビニではこの時期、店頭で薪や炭を売る場所が増えるので、芋煮会が始まってから「薪が足りない!」という時はコンビニまで走ればOK。
県内のあらゆる小売店さんたちが総力を挙げて芋煮会の開催に協力してくれています。
地方新聞
毎年芋煮会シーズンになると山形県の地方紙に現れる「芋煮会天気情報」。
雨風だけでなく、芋煮会に適しているかを鍋の表情で予報を出してくれます。
鍋の天気予報なんて、全国でもここだけではないでしょうか。
芋煮会日程が近くなったら、確認必須です。
具材の違いを言い合うのも実は恒例行事
冒頭でも紹介した芋煮の具材ですが、基本具材以外の具材と、味付けが地域によって違うので、開催する場所によってその違いを楽しむことができます。
ちなみに、基本の作り方はこちら↓
大まかな材料:①さといも、②こんにゃく、③牛肉、④ねぎ
大まかな作り方:洗って切った①②を水から煮て、①が柔らかくなったら③を入れあくをとり、砂糖、酒、醬油で味付けをし、切った④を入れて完成。
地域別追加具材例はこんな感じです。↓
- 村山(むらやま)地域…ごぼう、まいたけ、うどん、カレー(味変用)
- 最上(もがみ)地域…山菜、まいたけ、しめじ
- 置賜(おきたま)地域…厚揚げ、人参、大根
- 庄内(しょうない)地域…厚揚げ、豚肉、味噌(牛肉、醤油は入れない)
各地域の県民が集まると、「えー厚揚げ入れるの?!」「味噌味なんて豚汁みたい」「牛肉なんてお財布に優しくないわ」なんていう会話がはじまることもあります。言い争いをしているように見えることもありますが、実は恒例の芋煮トークを楽しんでいるだけですのでご安心を!
しょうゆ、さといも、こんにゃくは日本一の消費量
都道府県別・消費量ランキングにおける、さといも、こんにゃく、醤油の消費量ランキングでは、山形県が全国1位。
さといも、こんにゃく、醤油の消費量が、芋煮の消費量に比例していることは、言うまでもありません。
ギネスにも載った「日本一の芋煮会フェスティバル」
毎年9月は新車のショベルカーで芋煮を掬う「日本一の芋煮会フェスティバル」が開催されます。1989年から始まったこのイベントは、直径6.5メートルの鍋で30,000食の芋煮が振舞われるイベントで、2018年にはギネスにも登録され、毎年全国から芋煮を食べに来る人で賑わいます。
ショベルカーで芋煮をすくう図はちょっと衝撃的ですが、ここで使われるショベルカーは毎年新車で、潤滑油にはマーガリンやバターを使われているそうなので、衛生面はご安心ください。
ちなみに、日本一の芋煮の材料はこちら。
→里芋3トン、牛肉1.2トン、こんにゃく3500枚、長ネギ3500本、醤油700ℓ、酒500本(一升瓶)、砂糖200㎏、水6トン、薪6トン!
大きな鍋で作った方が美味しいと言われる鍋料理。一度日本一サイズでお試しください!
日本一の芋煮会フェスティバル
いかがでしたか?
聞くところによると、東北各地で芋煮と呼ばれる食べ物はありますが、
山形県民ほど芋煮をよく食べ、芋煮会をひらく県民は他にはないのだそう。
それほどまでに山形県民にとって欠かせない芋煮。そして芋煮会。
山形に住んだらぜひ、挑戦してみてくださいね。