都会人に『癒し』を提供したい。移住先で夢が膨らむ

那珂川町地域おこし協力隊 吉田 夏希さん
- 移住エリア
- 東京都→栃木県那珂川町
- 移住年
- 2023年
通勤電車に揺られ、朝早くから終電近くまで仕事。仕事漬けの毎日で疲れ果てていた自分。吉田夏希さんは、栃木県那珂川町に移住し、田舎ライフを満喫している。「ほんとうの自分を取り戻せた気分」——吉田さんはそう語る。
地域おこし協力隊の任期は2026年の春までだが、その後は那珂川町での起業を視野に入れている。吉田さんにとって、移住は「人生の大転換」だった。
仕事漬けの辛い毎日
大学で応用生物学を学んだ吉田夏希さんの実家は、横浜市。当初、東京都の企業でスキンケア商品の研究開発に携わっていた。ところが会社の業績が悪化、神奈川県内の企業に転職したが、仕事は激務だった。
「グループ内で休職者が出たり、私自身も周りからの当たりが強くなるのを感じたりして、心がすり減っていくようでした」
それでも、「やりたかった仕事だから耐えるしかない」と、疲れた体を鞭打っていた。
そんな時、友人が「田舎で野菜づくりを始めようかな」という話をしていた。吉田さんは、その時「これだ」と思った。大学時代に田舎体験プログラムの授業があり、そこで触れた田舎の方々の優しさを思い出し、仕事漬けではない、全然違う生活が垣間見えた瞬間だった。

若鮎大橋
地域おこし協力隊に応募
もともと旅行好きで、自然に親しむことも好きだった。生活を一新するには、田舎への移住という選択肢があるとひらめいた。そこで、2023年1月に、移住・交流推進機構が運営する移住・交流情報ガーデンを訪ね、「地域おこし協力隊」という制度を知った。移住先を詳しく検討しようと、ふるさと回帰支援センターを訪ねた。候補として栃木県、静岡県、高知県に対象を絞った。栃木県那珂川町と静岡県島田市には実際に足を運んだ。
「那珂川町に行ってみて、初めての印象は、『自然が豊かだな』『空が広いな』『車が少ないな』。町の方の家族のような温かさも気に入りました」
また、子供の頃から大好きだった絵本作家・いわむらかずおの美術館がある。そのことに縁を感じた。
早速、「観光協会のサポート」というミッションで、協力隊に応募して採用された。4月には町有住宅に移り住んだ。仕事内容は、都内での物販や着地型ツアーのスタッフ補助のような感じがメイン。ツアー中に町の魅力を紹介する場面もあった。「美人の湯」である温泉に興味を持ち、温泉ソムリエの資格も取った。自ら、味噌づくりのイベントや、「美人の湯」として知られる地元の馬頭温泉郷のPRも企画。
「とにかく野菜がとても新鮮でおいしくて、温泉は500円ほどで入れます。都会では考えられない贅沢です」と吉田さん。その後も、地域おこしの事例を学んだり、積極的にセミナーなどを受講して、自分なりの地域おこしについて考え実践していった。

いわむらかずお絵本の丘美術館で
都会人に癒しを提供する仕事を始めたい
那珂川町には鉄道も大型ショッピングモールもないけど、癒しがあり、素敵な日常をおくれている。買い物は、ネットショップもあるので困ることはない。
「都会でも頑張って働いていたけれど、今の方が『町のために』と、仕事のことを考えている時間が長い」
移住して間もなく2年。地元に知り合いも増えた。
「ランチに誘ってくれたり、アドバイスをくれたり、人付き合いに困ったことはありません」

地域の方との忘年会に参加
協力隊は任期が3年。半分以上の隊員は、地元に残って、地域貢献をしている。終了後、吉田さんは町に残り、化粧品と美容の知識を活かして、エステをはじめとする心と体の癒しを提供できるようなサロンを立ち上げる予定だ。それには、吉田さんならではの思い入れがある。
「以前の私のように仕事に疲れた人に来てもらって、心と身体をリフレッシュしてもらうようにしたい」
この構想を地元の人に話すと、「応援するよ」という反応が返ってくる。
「那珂川町は私にとって『心のふるさと』なんです。多くの人が、私のように、ここを『心のふるさと』にしてほしい」
生まれ変わった吉田さんの新しい人生ビジョンが花開きそうだ。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2025早春号の内容をWEB用に一部再構成したものです

那珂川町地域おこし協力隊 吉田 夏希さん / よしだ なつき
神奈川県横浜市出身。神奈川県の化粧品の研究開発の仕事が激務になり、地方暮らしを模索。初めて訪れた栃木県那珂川町の魅力に惹かれ、2023年4月、那珂川町地域おこし協力隊に着任。「観光協会のサポート」という立場で、那珂川町の豊かな自然や温泉の魅力などを精力的に発信している。