移住事例紹介

富士山の麓・富士宮で作る、自然栽培の家族に食べさせたい安心安全な野菜

千葉県→静岡県富士宮市
2016年移住
田村栄次・真弓さん
「たむ農園」運営

田村さん一家は、栄次さん・真弓さん、そして1歳の航平くんの3人家族。千葉県八千代市で暮らしていましたが、2015年、栄次さんが43歳の時に千葉県白井市で農業研修を受け、就農することに。その後、2016年に静岡県富士宮市に移住し、「たむ農園」を営んでいます。就農のきっかけや現在の暮らしぶりについて伺いました。

安心・安全な野菜を作り、家族に食べさせたい

富士山の麓、静岡県富士宮市の猪之頭地区で自然栽培の「たむ農園」を営む田村さん一家。栄次さんは千葉県八千代市、奥さまの真弓さんは神奈川県横浜市の出身で、2016年7月に千葉県八千代市からこの地に移り住みました。

栄次さんは43歳になるまで、農業とまったく関わりなく過ごしてきました。しかし、東京の文房具店で働いていた時に、労働環境の変化をきっかけに人生を見直しました。衣食住、暮らしについて考える中で自然と、「次の職業は農業だ」と暮らしの基となる「食」をつくる仕事に興味が湧いてきたそうです。

「高校卒業後、静岡県沼津市の工学系の大学を出て、最初にプログラマー、次にミュージシャン、そして前職の文房具店と職を変えて生きてきました。これからが第4の人生です。」

▲安心・安全を目指し育てる野菜

思い立ったら即実行の栄次さん。「安心・安全な野菜を作り、家族や友人に食べさせたい」という思いから、当時住んでいた千葉県八千代市に隣接する白井市で1年間の農業研修を受け、農薬不使用でぼかし肥料を作って畑に撒く方法を学びました。その後は農家の畑を見学したり、短期研修をうけたり、本やインターネットで調べたり。栄次さんは独学で自然栽培を学びました。

五感を使って学ぶ“体感型”農園を目指して

1年間の農業研修を終えた栄次さんは、自身が作りたい農園のイメージを描きました。そして、そのイメージには「人は自然の一部、人間が地球上で一番偉いわけではない。私たちは、他の生き物の命を頂いていて、その頂いた命によって、笑ったり、泣いたり、怒ったり・・・の生活が成り立っているということを思い出して欲しい。」という思いが根底にありました。

「様々な方に来ていただき単に農作業を行う“体験型”ではなく、五感を使って学ぶ時間や空間を提供できる“体感型”農園を目指しています。」

理想を実現できるような農地を探しましたが、住んでいた千葉県八千代市の近隣では最適な場所が見つかりませんでした。そこで関東以南に範囲を広げ、気軽に来て体感してもらえるように都市に近い場所で、改めて農地を探し始めました。
就農希望の移住者を受け入れる自治体のイベントに参加したり、移住の可能性のある地域へ実際に足を運んだりと積極的に様々な移住先を探した田村さん一家。最終的に、夫婦それぞれの実家がある千葉と横浜にも近かったことから、静岡県が有力候補地になりました。その中でも、有機農業が盛んで、子育て世帯の受け入れに力を入れている富士宮市に魅力を感じたと言います。

「就農地と居住地、両方を用意してくれるということが、富士宮市猪之頭に移住を決めた大きな理由でしたが、富士山やきれいな湧水もあり、ここに決めて本当に良かったです。静岡県にエリアを絞ってから、有楽町の「ふるさと回帰支援センター」にある静岡県の移住相談窓口へ通い、私たちの希望にあった農業ができる地域の相談をしました。そのあとに、富士宮市の移住担当者に繋がりましたが、その方たちとの相性がよかったのも大きかったと思います」と栄次さん。人との出会いも大切だと話してくれました。

「買い物などは富士宮市街地へ車で20、30分程かけて行っていますが、市街地から自宅に戻ってくるだけでも空気の違いを感じるほど、この辺りは空気が澄んでいます。それに息子がまだ1歳なので、近くに比較的大きな朝霧高原診療所もあるのが心強いですね」と真弓さんもこの環境に満足しているようでした。

自然農なので子どもが畑に入っても安心

「たむ農園」では、肥料や農薬を一切使わない自然栽培の一種・炭素循環農法で栽培しています。栽培する野菜は、一般家庭で食べるものを中心に、主に葉菜類、根菜類、果菜類、イモ類、豆類など少量多品目。様々な種類の野菜が植わった畑はまるでパッチワークのようにきれいでした。

富士宮市から用意してもらった土地は、5年ほど耕作放棄されていた畑。栄次さんはトラクターや耕運機を使って耕した訳でなく、草刈りを3日ほどかけて行なっただけで野菜の種を蒔き栽培を始めたそう。種類によってはうまく作物が育ちませんでしたが、根が深く伸びる麦などを育てることで土の中まで空気を送ることができ、徐々に土を作る微生物が増えて、どんな作物でも育つ豊かな土壌になっていきます。

「土作り3年と言われるくらいなのでまだまだですが、7月から始めて約半年で10種類ほどの野菜を作りました。自分たちが作った野菜を収穫して食べていますが、ちょー美味しいですよ!」と満足げに語る栄次さん。

体が小さければ小さいほど食べ物の影響を大きく受けるので、安心・安全な野菜で航平くんの体がつくられ成長していくのは、子育て世代にとってうらやましいことではないでしょうか。

真弓さんは「農薬や化学物質を使わない自然農なので子どもが畑に入っても安心です。友人が子どもを連れて遊びにきた時に畑にカエルがいるのを見て喜んでくれました」と嬉しそうに話します。

山も川も海も、都市部や山村部も。静岡県は選択肢がたくさん

移住先を静岡県に絞った理由として、お互いの実家がある首都圏からほど近いことも挙げた田村さん夫妻ですが、暮らしてみての静岡県の印象を栄次さんに伺いました。

「出身の千葉からも富士山が見え、幼稚園の頃から富士山に憧れがありました。富士山の麓で、毎日富士山を眺めながら、富士山と共に生きる。そんな素晴らしい生活が送れるなんて思ってもいませんでした。」

▲雄大な富士山がそびえたつ

また、改めて移住先としての魅力を考えた時に、静岡県は東西に広く、山も川も海も、都市部や山村部もあるので、好きな場所で暮らすことができ、レジャーも豊富なのがいいと感じているそうです。

「まだ畑仕事が忙しく、あまり出かけることができていませんが、伊豆や山間部には温泉もありますし、もう少し落ち着いたら家族でゆっくり出かけたいです。」

近所ではどの辺りに遊びに行くのか尋ねると、真弓さんが「お気に入りの場所は、地域の遊び場となっている『陣馬の滝』で、湧水がとても綺麗なんですよ。」と教えてくれました。

▲水が豊かな陣馬の滝

人生は一度きりで、移住によって始まる新たな暮らしもある

今後の「たむ農園」について、「野菜を100種類作ることと、100家族分を賄えるようになることを目標にしています」と栄次さん。理想とする“体感型”農園についてはすでに形になり始めていて、麦踏みや人参収穫などのイベントが行われました。

▲イベントが開催されることもある麦踏み

また真弓さんは将来、野菜を加工して販売していくことも視野に入れています。野菜の調理法については、子育てで繋がった地域の方や週に2回この地区で催される「わいわい市」を通じて知り合った先輩農家から教えてもらい、勉強中なのだそう。
農業をする上で欠かせないのが住民同士の付き合いですが、都会から来た人には面倒に感じる部分もあるかもしれません。しかし、そこの土地の人と関わることで、その地域ならではの暮らしが待っています。

「人生は一度きりで、移住によって始まる新たな暮らしもあります。迷っているなら動いたほうがいいと思います。新しい未来を作るのは自分自身です。」
新しい未来をまさに切り開いた栄次さん。その目は優しく家族を見つめていました。