移住事例紹介

震災ボランティアがきっかけで岩手が大好きに。花巻のぶどうづくりを全力でサポートしたい!

東京都→岩手県花巻市
2015年移住
鈴木 寛太さん
花巻市地域おこし協力隊

岩手県花巻市の地域おこし協力隊一期生として活動する鈴木寛太さんは、ご両親も東京育ちで田舎を持たずに育ちました。2011年の東日本大震災を機にボランティアで岩手を訪れ、2015年、ついには地域おこし協力隊として移住するまでに至ります。移住までの経緯や現在の暮らしぶりなどを伺いました。

岩手との出会いは震災ボランティア。友人の影響で岩手移住を意識

東京生まれ、東京育ちの鈴木さんは現在25歳。岩手には縁もゆかりもありませんでしたが、現在は岩手県花巻市の地域おこし協力隊一期生として活動し、花巻市大迫(おおはさま)という山あいの地区で暮らしています。

岩手に関心を持つようになったのは2011年の東日本大震災がきっかけでした。当時大学生だった鈴木さんは、大学のボランティアプログラムを通じて岩手県遠野市を訪れ、全国から寄付で送られてくる本を仮設倉庫などに運び仕分けをする作業を担当。大学4年間で7回にわたり岩手に通ううち、東京でも岩手を軸にした知り合いが増えていきました。

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「東京で岩手つながりの友人たちと会う機会が多くなったんですが、その中に、同い年の岩手出身者がいました。彼は、地元を元気にしたいと寺子屋のようなイベントを企画し、東京と岩手を行き来しながら活動していました。自分も岩手に関わりたいと思うようになったのは、彼の影響もあると思います。」

大学卒業後はIT企業に就職したものの、東京で仕事をしながら岩手に関わる2拠点での暮らしや活動を意識するようになっていった鈴木さん。ご両親も東京出身のため、学生時代、長期休みには「実家」に帰る同級生を少し羨ましく思っていたことも、地方に憧れる理由だったかもしれません。

鈴木さんは就職して1年が過ぎた頃、花巻市が地域おこし協力隊を募集することを知りました。学生時代にボランティアを経験したことで、「もっと分かりやすい形で社会に貢献したい。」という気持ちが大きくなっていた鈴木さんは、岩手県の地域おこし協力隊について情報を集め始めます。

都内で行われた花巻イベント

▲都内で行われた花巻イベント

同時期に複数の自治体で募集がありましたが、都内での説明会や現地見学会に参加していくうちに、花巻市大迫地区のぶどう栽培とワイン醸造に従事する方の思いや情熱に動かされ、花巻市に応募。希望するプロジェクトに配属されました。鈴木さんは会社を辞めるにあたり、家族や恩師、会社にも相談しましたが、「人生は一度きり。好きなことをやればいいよ。」と背中を押してくれる人ばかりで、迷うことなく花巻市への移住を決めたそうです。

100件以上のぶどう農家訪問により、自身の成長を実感する協力隊の仕事

地域おこし協力隊として着任してから1年が経過した鈴木さんに、ご自身の変化について伺いました。

「一番の変化は、東京にいた頃より図太くなったことですね。相手にきちんと言いたいことを伝えられるようになったというか。以前は自信がなかったり、言えないことも多かったりしたのですが、今の仕事で100件以上のぶどう農家さんを毎日訪ねて話していくことで、鍛えられました(笑)。」

鈴木さんはほかにも、ぶどう栽培を支援するボランティアや学生らとの調整も担当しています。時には苦情の対応をすることもあるそうですが、前職時代よりも直接人とコミュニケーションする機会が増え、目の前の人のために仕事をしているという感覚が持てるようになり、苦労があってもやりがいは大きいと言います。

栽培ボランティア「ぶどうつくり隊」の皆さんと支援先のぶどう畑で

▲栽培ボランティア「ぶどうつくり隊」の皆さんと支援先のぶどう畑で

この日は、ぶどうの試験栽培や新規就農者への技術支援もしている「葡萄が丘農業研究所」を案内してもらいました。丘の上から見渡す景色を指さしながら、鈴木さんは説明します。

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「大迫のぶどうの特徴は、加工用といっても丁寧に栽培していることです。ぶどうが雨や風で傷まないようにビニールで屋根を作っているので、上から見ても、ぶどう畑だということがひと目で分かるんです。」

この研究所には、鈴木さん専用のぶどう・シャルドネの畑も一列あります。なかなか毎日は来られないことを気にしながら、鈴木さんはぶどうの様子を観察していました。

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お祭りを機に交流を深め、今では地域のムードメーカーに

大迫地区には昔から続くお祭りがあり、鈴木さんが暮らしている地区からは「上若組(かみわかぐみ)」と呼ばれる地域団体で参加します。そこには10代から70代の町内の人が集まっていますが、お祭りの際にはみんなで集まって山車を作ります。鈴木さんも仕事が終わると顔を出すようになり、このお祭りを機に交流を深めました。もともと年上に可愛がられるキャラクターもあってか、鈴木さんは地元の皆さんとすぐに打ち解け、生活の面でもお世話になっているようです。

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▲商店街の方と

取材中に訪ねた商店街では、店主の方が「寛太君とね、チンドン屋早池峰一座をやっているんだよ。映像もあるから見てって。」とエピソードを披露してくださいました。鈴木さんは仕事のかたわら、大迫の商店街を盛り上げる一環として、一座に加わり活動することもあるそうです。お話を聞いていると、鈴木さんの存在が地元の皆さんの元気の素にもなっていることがうかがえました。

ほかにも鈴木さんらしさがよく出ているのが通称「寛太カレー」です。ほかの自治体の地域おこし協力隊や東京の友人を大迫の自宅に招き、一人暮らしで覚えたカレーをふるまうのです。

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「地元の方からたくさんの野菜をいただくので、野菜たっぷりのカレーを作って、遊びに来ていた友人たちに振る舞っていたら、いつの間にか“寛太カレー”と名前がつきました。先日東京で実施した飲食店でのイベントでも作って提供したんですが、すぐに売り切れてしまいました。」

田舎を持たない東京っ子だった鈴木さんは、今や、ぶどうやカレーを軸に、大迫と東京をつなぐ存在になりました。

花巻だけでなく他の地域とも連携して、岩手を盛り上げていきたい

花巻市大迫地区にどっぷりと入り込んで活動をしている鈴木さんですが、岩手県内のほかの地域にも積極的に足を運んでいるそうです。

「岩手が好きになったきっかけでもある遠野市や沿岸地域にはやはり思い入れがありますね。先日は、勉強も兼ねて、陸前高田にあるぶどう園の収穫手伝いに行ってきました。
あと、岩手県内各地に、地域を盛り上げるために頑張っている同世代のプレイヤーがいるので、プライベートな時間ではそういう仲間と行ったり来たりして交流しています。

岩手県は広いですから、ひとつの市だけで頑張ってもできることは少ないかなと思って。県全体で盛り上げていくためにも、他の地域ともどんどん連携していきたいと思っています。」

岩手は不便なところもあるが、何より“人”が近くて温かい

岩手県への移住を検討している方に向けて、鈴木さんにメッセージをお伺いしました。

「岩手はとにかく自然が豊か。その分、雪も降るし不便なところも多いですが、やはり、人の温かさが最大の魅力だと思います。今の職場(役場)も、みんなが家族みたいで、言いたいこともなんでも言えるし、こんな風に人の優しさがダイレクトに伝わる経験は、東京で暮らしていた頃にはなかったですね。」

一方で、岩手に来て、自分の故郷である東京を大切に思う気持ちも芽生えてきたといいます。

「こっちは夏祭り、秋祭りと、お祭りがすごく多いんですが、その時期になると、普段東京や仙台に出ている人たちも、みんな地元に帰ってくるんです。それがなんかいいなぁと思って。家族や先祖を大事にする気持ちに気づかされました。地元の人たちにも『花巻にはずっといてほしいが、東京の家族のことも大切にしなさい』ということを、よく言われています。」

地域の人たちが集える場所をつくりたい。将来的には2拠点居住も

地域おこし協力隊としての任期は残り2年。鈴木さんに今後の予定を伺ったところ、まだ具体的なことは決めていないものの、あたためている企画はあるようです。

「まずは、大迫のぶどうのプロジェクトに全力で取り組みたいと思っています。もっとぶどう畑の面倒を見たり、ワインについて知識を深めたりしたいですね。エーデルワインの中に、新しく有料の試飲所、テイスティングルームができるなど、新しい取り組みもスタートしています。これからも大迫の皆さんのサポートをしながら、じっくり考えていきたいですね。」

▲大迫にあるワイン醸造所、エーデルワインに新しくできたテイスティングルーム

「まだ漠然としているのですが、将来的には、地域の人が集える拠点づくりのようなことができないかなと考えています。あと、いずれは花巻と東京を行ったり来たりする2拠点居住というライフスタイルにも興味がありますね。」

岩手に来て人の温かさにふれたことで、自身のふるさとである東京を想う気持ちにも気づかされたという鈴木さん。東京出身者だからこそできる、「岩手と東京をつなぐ」活動にも力を入れていきたいと考えているようです。