移住事例紹介

興味の赴くままに動き、辿り着いたのは金沢でした

東京都→石川県金沢市
2015年移住
長谷川 政信さん
「茶菓工房たろう」勤務

北陸新幹線が開通し、東京から約2時間半で訪れることができるようになった石川県金沢市。加賀百万石の城下町として昔ながらの歴史と文化があるこの場所に、東京からやってきた長谷川政信さん。自分の思い描く暮らしを目指し、金沢に辿り着くまでのお話をうかがいました。皆さんの移住に対するイメージが変わるかもしれません。

都内での暮らしを経て、「行けば何とかなる」と金沢へ

幼少期から東京都青梅市で育った長谷川さん。高校を出て、一つの技を極めてみたいという思いから書道の専門学校に入学し、卒業後、次の道を模索する中で飛び込んだのは役者の世界でした。

「旅行で訪れたニューヨークで舞台に感銘を受けて、自分もやってみたいと思ったのがきっかけでした。まだ若かったこともあり、とにかく勢いで動いてみようと養成所に入り、いろんな人と舞台をやらせていただきました。」

テレビでも活躍している役者さんたちと肩を並べて舞台に立っていた長谷川さん。10年以上にわたり、役者生活を送っていましたが、2012年に転機が訪れます。

「父が倒れたという知らせを受け、都心部に住んでいたのですが実家のある青梅市に戻ることになったのです。ちょうど役者としても区切りが必要だと感じていた時期だったので、一旦介護に専念しようと決心しました。」

2年間に及ぶ介護を経て、お父さんを見送ることができたという長谷川さん。地元に留まる必要もなくなり、人生の次の段階では自分の好きな場所に住んでみようと移住を考えるようになりました。
そこで、長谷川さんが移住先の候補として挙げたのは、北陸最大の都市「金沢」。どうして縁もゆかりもない金沢が気になったのでしょうか?

「金沢というと、昔ながらの古い町並みや文化、芸能が残っているというイメージがありました。そんなまちは日本全国探せば金沢以外にもあるとは思うのですが、ちょうど北陸新幹線が開通したことが大きかったかもしれません。東京からも2時間半でいけますし、新幹線が通ってこれからまちが変わっていきそうなポテンシャルを感じました。」

▲北陸の玄関口、JR金沢駅

思い立ったらすぐに行動を起こすのが長谷川さん。東京にある石川県の移住相談窓口で情報を集め、自身でも何度か金沢に足を運び、まちの様子を見て回るなかで、少しずつ移住へのイメージを広げていきました。

「移住相談窓口では、暮らしの情報を教えてもらいました。例えば雪は多いけどスタッドレスタイヤを履いていれば大丈夫、とか、一人で住むならこのエリアがおすすめとか。移住するまでに金沢へは3回ほど行ってみたのですが、まちがコンパクトで住みやすい印象を受けましたね。知り合いは全くいませんでしたが、暮らしてみればなんとかなるだろうと不安はありませんでした。」

通常であれば、仕事を決めて、家を決めてと、段階を踏んで移住の準備をする人も多いなかで、長谷川さんの動きはあくまでも軽やかです。あれこれ心配して動けないよりもとにかく動いてみることで、移住はもっと気楽にできるのかもしれません。

まちのことを知るなかで出会った “金沢らしい”仕事

2015年10月から金沢での暮らしを始めた長谷川さん。まずは仕事が見つかるまでマンスリーマンションに住み始めました。ハローワークや求人サイトで仕事を探すなか、空いている時間は市街地を散策しながら、少しずつ金沢のまちについて理解を深めていきました。

「仕事を始めるまではとにかく時間があったので、自転車で散歩しながら兼六園や金沢21世紀美術館など、いろんなところに行きました。特に実家にいた頃、図書館で働いていたこともあったので、図書館という場所が大好きで。一日中、図書館に入り浸って好きな本を読みふけることもありました。金沢にはいい図書館がたくさんあるんですよ。」

▲長谷川さんお気に入りの図書館にて

金沢のまちがますます気に入り、せっかくなら金沢らしさがある仕事につこうとじっくり時間をかけて職探しをした長谷川さん。出会ったのは、和菓子屋「茶菓工房たろう」での販売の仕事でした。

▲茶菓工房たろう鬼川店

「茶菓工房たろう」は2005年に創業した金沢でも新しい和菓子屋。素材にこだわり伝統的な和菓子の製法を大切にしながらも、デザインや遊び心を取り入れた商品の数々は、県内外から高い評価を受けています。
長谷川さんが勤めているのは、市内に3店舗あるうちのひとつ、JR金沢駅の金沢百番街店。駅構内という場所柄、毎日多くの人が訪れるそうです。

▲長谷川さんがつとめる金沢百番街店

「和菓子屋さんというと、ゆったりとした雰囲気のなかで接客するイメージでしたが、金沢百番街は金沢の玄関口にあるショッピングモールということもあって、ひっきりなしにお客様がやってきます。勤務中は休む間もないほど大変なのですが、こんなにも多くの人が金沢に興味を持って来てくださっているんだということが何だか嬉しいですね。やはり金沢は北陸最大の都市なんだなぁとひしひしと感じています。」

働き始めて1年で店長に抜擢されたという長谷川さんは世代や国籍問わず、和菓子を通じて金沢の魅力を感じてもらえる店づくりを進めています。

金沢の暮らしは毎日が“旅”のよう

現在、長谷川さんが住んでいるのは金沢市街地にある長町武家屋敷跡の近く。長町界隈はかつて藩士が住んでいた屋敷跡が並ぶエリアで、石畳の小路沿いに生活の営みを感じる用水路が流れる、風情のあるまち並みが人気です。

▲土塀が続く武家屋敷エリア

「休日は多くの観光客が訪れる場所ですが、一本通りに入ると落ち着いた雰囲気になるのでとても気に入っています。東京の都心で住んでいた場所は昼夜問わず賑やかだったので、仕事から帰ってきて静かな時間を過ごせるのはとても休まりますね。」

休みの日は家のことを済ませたり、自転車で出かけたり、お寿司を食べに行ったりなど、気分の赴くままに過ごしているという長谷川さん。食材を買いに行っても新鮮なカニや魚、源助大根や金時草といった加賀野菜が並んでいるため、料理も楽しんでいるのだそう。

▲新鮮な魚介類が並ぶ近江町市場

「金沢で暮らして1年4ヶ月になりましたが、今でも毎日が旅行のようでいろんな発見があります。例えば冬の雷! 日本海側では雪が降る中で雷鳴が轟くというのを初めて知りました。あと、東京では常に加湿器をかけているところが多いなかで、こっちは冬でもしっとりしているので除湿機が必要なことも驚きでしたね。住んでいる人には当たり前のことでも、移住者の私から見ればどんなことも新鮮で……。だからこそ余計にこの土地の良さを感じられるのだと思います。」

いつでもすぐに動ける自分でありたい

「自分が思い描いていた理想の環境」と言うくらい、金沢の暮らしに魅了されすっかり慣れた長谷川さんですが、先のことはあまり考えないようにしているのだそうです。

「昔から、『これがこうでないと嫌!』というようなこだわりはあまり持たないようにしているんです。金沢とご縁があればこれからもぜひ住み続けたいですが、将来ほかに面白い場所に出会うことがあれば、移り住む可能性も十分あります。今は地方にいてもインターネットやSNSなど距離を感じさせないツールが増えていますし、どこに行っても不便は感じないと思います。動きたいと思った時に、いつでも動ける自分でありたいですね。」

あれこれ考えず、とにかく行ってみる、やってみる。できそうでなかなか難しいことかもしれませんが、長谷川さんは常に自然体で、決して無理することなく穏やかな暮らしを実践しています。
「一年後の自分がどうなっているのか楽しみ」。そう笑顔で語る長谷川さんの姿が印象的でした。