移住事例紹介

北海道で日本一のシードルを目指して

神奈川県→札幌市→北海道深川市
2014年移住
上平 啓太さん
アップルランド山の駅おとえ(ふかがわシードル醸造)

北海道が好きで、いつか北海道で暮らしたい。
そう思っても、なかなか踏み出せない方も多い中、夢の一歩を踏み出した上平さんは、思い描いていた以上の暮らしに出会えたようです。

北海道のほぼ中央に位置し、農業を基幹産業とする深川市の特産品の一つ「りんご」を使い、原料から製造まで100%深川で醸造する果実酒「ふかがわシードル」。

そのシードル造りに夢をかけた上平さんの移住ヒストリーです。

憧れの大地 北海道

神奈川県で生まれ育った上平さんは、漠然と田舎暮らしに憧れを抱いていたものの、関東の大学卒業後は首都圏の企業に就職、その後転職で大手コンビニエンスストアの本社に勤務していました。

「社会人になってからは『いつか北海道へ移住したい!!』と、北海道へ旅行するたびに求人情報誌を買って、北海道でどんな仕事をしようか考えていました。
果樹栽培に興味がありましたが、パートナーや資金の問題もあって1人ではできないと思ったし、農業生産法人に就職の道も考えたけど、そこからどう独立するかのビジョンも描けてませんでしたね。
それでもなんとか北海道で暮らそうと思っていました!(笑)」

どうしてそんなに北海道へ移住したかったのかとたずねると、「学生時代から北海道にはよく来ていて、北海道は空気が合う! いつ来ても居心地がいい! 食べ物がおいしい! 自分にとって最高の環境だと思っていました!!」と、キラキラした瞳で北海道への思いを語ってくれました。

そんな北海道大好きな上平さんは、30代になった頃、このままずっと都会で働いていくことが不安になったそう。

「独身なので、家族の生活の心配とかはありませんでしたが、漠然と都会で働き続けるのか、このままの将来でいいのか、その不安が大きかったですねぇ。」そう移住前を振り返ります。

北海道での暮らし、特に雪や寒さに対する不安はなかったのでしょうか。

「大好きな北海道で暮らせる。それだけで一定以上の幸せがあると僕は思っていました。それに冬こそ快適ですよ!!北海道の住宅は断熱がしっかりしていて、生活空間の快適さがすごい!!でも、これを本州の人に言葉で伝えても、伝わらないんですよ。向こうは寒かったらセーターを着るけど、こっちにはストーブがある!!

外はマイナス10℃になっているけど、家の中は暖かいですよねぇ。冬なのに半そで短パンでアイスクリームを食べられる!北海道最高ですよ!!」

すっかり道産子の感覚で北海道生活を満喫している様子の上平さん。

本州の方には大げさに聞こえるかもしれませんが、北海道は日本一室温の平均が高く、24時間暖房の家も少なくないのです。そして夏は涼しい。雪国も意外と暮らしやすいのかもしれません。

地域おこし協力隊へ

「移住に向けて不安があったとすれば、やっぱり仕事ですね。実は深川市に決まる前に、他のまちの地域おこし協力隊にも応募していたんです。結果は不採用でしたけどね。でも、このまま東京にいたらダメだと思い、とりあえず札幌へと移住しました。」

元々道東か、道北に移住しようと思っていた上平さんは、札幌では今後の就職に向けてプログラミングの勉強をしながら、就職活動をしていたそうです。

その時に出会ったのが「深川市の地域おこし協力隊」の募集でした。

▲市内「戸外炉峠」から市街地を望む景色。一面に緑が広がる。

北海道旅行ではいつも通過してばかりだった深川市のまちですが、この募集には運命を感じたそうです。

「僕が深川市の地域おこし協力隊に魅力を感じたのは、募集内容が市の特産品である「りんご」を100%使った『ふかがわシードル』の醸造方法を学び、商品化するという任務だったからなんです。
地域おこし協力隊って、好きなことをやって欲しいとか、地域を盛り上げて欲しいといったような漠然とした内容の募集が多いのですが、深川市の募集は非常に具体的で、協力隊卒業後のビジョンが明確に浮かぶものでした。
果実酒造りという専門性の高い仕事を3年かけてしっかり学び、憧れの北海道で「果樹」に関係する仕事が出来るなんて、まさに僕のためにある募集だろうと思いましたね」

シードル発売に向けて

そうして2014年10月、深川市地域おこし協力隊として着任しました。

「当時、醸造施設こそ完成していましたが、中身についてはこれから作り上げていくという状況でした。
機械の使い方を習いながら、醸造の師匠から酒造りを学び、瓶やラベルを決めるといったことまで、新たな製品を1から造り上げる過程を経験させて頂いたことは、とても貴重な体験でした」

▲上平さんが勤める「アップルランド山の駅おとえ」ここに醸造施設がある。

「ただ、酒造りは手順がわかったからといって、毎回同じものができるわけではないという難しさがあります。
うちで造っているシードルも、原料のりんごによって糖度や酸度も異なりますし、同じ温度でも季節や状況により、同じように発酵するとは限りません。良い酒を造り続けるためには、経験を重ねて学ぶしかないと思っています。」

協力隊として着任するまで酒造りの経験が一切なかった上平さんにとっては、師匠から学ぶ全てが新鮮で興味深いことだったそう。

「うちのシードルはすっきりクリアで良い後味にするため、師匠の発案で芯や種などの不要な部分を1つ1つ手作業で取り除いています。手間はかかりますが、これを行うと実際に雑味が減っておいしくなっていることが実感できます。酒造りはとても論理的で工夫の余地が多くて楽しいですよ」と、笑顔で語ってくれました。

このまちの暮らし、そしてこれから・・・

深川で暮らしてみると、想像以上に便利でビックリしたと言う上平さん。

「田舎暮らしを希望した時点で、ある程度の不便さは覚悟していました。

でも実際来てみると、スーパー、コンビニ、本屋、レンタルショップ、ホームセンターにドラッグストアとなんでもあるため、日常の買い物は車で5分も走ればことたりちゃうんですよね。
そしてちょっとした買い物なら札幌や旭川へも車ですぐに行ける。
札幌までの一般道は信号も渋滞もないので、自然の中を快適にドライブできて最高ですよ。」

最後にこれからについて尋ねてみました。

「果樹産地としての深川を、もっと盛り上げていきたいですね。良い原料は酒造りに必須ですから、地名を冠したおいしい果実酒を造り広めていくことは、「北海道深川産の果物はおいしい!」という認識を広め、ひいては地域の産品全般のブランドを高める事につながると考えています。
そのためにも、まずは妥協せずに最高の酒を造り続けることが大事だと考えています。

その中で、りんご以外の果物にも可能性を見出していきたいと思っています。
特に近年、北海道内では醸造用ぶどうの栽培が広がり、その品質の高さは日本一と言われてきています。
気候変動で温暖化が進んできている影響もあり、かつては北海道では栽培が難しいとされていた欧州産の高級品種が栽培可能になってきたとの論文も発表されています。
将来的には深川産の醸造用ぶどうを使い、シードル造りで磨いている技術を活かして、世界でここだけしか造っていないような、すっきりクリアで後味の良いスパークリングワインを造ってみたいです。

また、これから果樹で新規就農を目指そうとしている方にとっても、こういった加工施設と連携できるということは経営の安定化に繋がると思いますので、一緒に北海道の果樹を盛り上げていきたいという仲間も求めたいです。

常に目標は高く。このまちでおいしい果実酒造りに励みます」

憧れだった北海道での生活が、こんなに素晴らしいものになるなんて、移住を悩んでいた当時には想像も出来なかったと振り返る上平さん。

ちょうどこの取材の後、シードルのコンテストである「第二回 フジ・シードル・チャレンジ2018」にて最高位である「トロフィー賞」及び「金賞」「ベスト・ヴァリュー賞」を受賞したとの一報が届きました。

「フジ・シードル・チャレンジ」とは、1997年から続く国内最大規模のワインのコンテストである「ジャパン・ワイン・チャレンジ」に併せて行われたシードルのコンテストで、第二回である今回は、フランスやオーストラリアといった国内外の50銘柄が出品。

シードル・ワイン業界の著名人によって厳正な審査が行われ、その中の最高位に選ばれたということは、上平さんが師匠と目指してきた「妥協せずに最高の酒を造ろう」という思いが認められたということなのでしょう。

▲着任から半年後に新発売した「ふかがわシードル」からはじまり、2017年にはシードルの大吟醸とも言える「ふかがわシードルプレミアム」を発売。また、2018年は洋ナシを使った「ふかがわポワレ」を発売。

「人との出会い、タイミング、どれが欠けても今の暮らしはなかったし、シードル作りの師匠が居てくれたからこそ、今の自分がある」そう感謝の気持ちを笑顔で語る姿が爽やかな上平さん。

「あとはいつか家族をつくれたら・・・」と、話してくれたものの、まだ予定がないそうなので、募集中です(笑)。

これからもおいしいシードルを造りながら、ここでの暮らしを満喫して欲しいです。

現在深川市では移住のワンストップ窓口として「深川市移住定住サポートセンター」を開設し、専任の移住コンシェルジュ2名を配置のもと、「仕事・住まい・子育て環境」などの相談に応じています。ぜひお気軽にご相談ください。

深川市移住定住サポートセンターHP
深川市地域おこし協力隊募集ページ(深川市HP)

記事を書いた人:佐藤絵里子 写真提供:工藤了